まちづくりにも積極的に参加
新たな発想と自分自身への気づきをくれたプロボノ

従業員プロボノ参加者 池田 勝秀さん

営業部門に身を置く傍ら、個人でボランティア活動にも参加する池田勝秀さんは、二度に渡ってプロボノを経験。セクシャルマイノリティに向けた支援を行う団体への事業計画提案と、困難を抱える子どもたちを支援する団体の営業資料作成などに関わった。現在は認知症予防というテーマにも関心を持つ池田さんだが、社会課題に関心をもつようになったきっかけは、プロボノが繋いでくれた人とのご縁だったという。プロボノを起点に広がった、池田さんの世界。自身の変化を聞いた。

プロボノが近づけてくれた、地域社会と自分との距離

プロボノに参加する前から、ボランティアは身近な存在でした。幼い頃、地域の子どもたちがたくさん集まる家で育ったのですが、母親が近所の子どもたちと一緒にご飯を食べたり、親が働きに出ている家庭の子を家に呼んで見守りをしたりしていて。誰かのためにできることを行う、というボランティアの心が、身近なところにあったんです。そんな環境で育ったこともあり、社内でプロボノの説明会があると知った際に、一度話を聞いてみようと思いました。

プロボノに参加して一番大きかった発見は、自分自身が地域の“動かし方”を全然知らなかったということです。2018年に参加した2度目のプロボノでは、「NPO法人 居場所サポートクラブ ロベ」という困難を抱えている子どもたちへの居場所や学びの機会を提供する団体に向けて、企業から支援を得るための営業資料を作成しました。当時、茨城県つくば市の五十嵐市長に話を伺う機会があったのですが、五十嵐さんは地域の政治との関わり方について解説した書籍も出版されている方でした。自分がいかに地域社会のことに無関心だったか、当時反省したことをよく覚えています。

それからは、自分が住む地域への意識や関わり方が変わったんです。趣味でインラインスケートをやっているのですが、地元のスケート場の運用方法に気になることがあり、行政に意見書を提出したこともあります。他にも、同じ東京都内でも区が違うと、行政の取り組みの特徴が全然違うということも、プロボノを通して学びました。

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池田 勝秀さん
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居場所サポートクラブ
ロベのプロジェクトでの打ち合わせ風景

自分が住んでいる品川区のことを調べてみると、どうやら高齢者へのサービスが手厚い。個人的に認知症予防に関心がありボランティア活動も行っており、高齢者向けのサービスに力を入れている品川区とは親和性も高く、何かできないかなって思っているんです。プロボノに参加しなかったら、そんな発想を持つこともできませんでした。

仕事で培ったスキルや知恵を活かすボランティア活動がプロボノですが、プロボノで得た学びや気づきを還元する先は必ずしも仕事とは限りません。品川区に住むひとりの住民としての意識が変わって、近いようで遠かった地域との距離がぐっと近づきました。

ズレた視点が、活きる。

インラインスケートというマイノリティスポーツをしていたこともあり、周囲と自分との間にある視点のズレのようなものを感じていたことも多かったんです。インラインスケートは公に許可された場所以外の公園や街なかではできないですし、メディアへの露出もまだまだ少ない競技。肩身を狭く感じることもあります。一方で、テレビやメディアに大々的に取り上げられ、露出が多いスポーツもたくさんある。「同じスポーツなのに、どうしてこんなにも差が生まれているんだろう?」と、社会に疑問を持つきっかけが日常にたくさんあったんです。

疑問を持って社会を見ることは、異なる視点でものごとと向き合うことでもあります。そんな姿勢は、プロボノにも活かせたと感じていて。プロジェクト中は、支援先の団体に向けて企業人がさまざまな形で協力するのですが、支援先の団体のことを客観的な視点で見るだけでも感謝していただけるシーンがあって。ソーシャルセクターに日常的に従事していないビジネスマンだからこそ、気づける視点があると思うんです。

プロボノでどんな貢献ができるのかを不安に感じている人もいるかもしれませんが、自分の中にある素直な疑問を投げかけることも十分な貢献の形です。多様な視点から新しい解決策が生まれることがあるのではないかなと思います。

外に出る、視点が増える、世界が広がる。

プロボノの面白さは他にもあって、自分の世界がどんどん広がる点も魅力だと思うんです。仕事面でも、所属している会社の業務をただ毎日こなすだけでは、成長できる幅も限られてしまう。今の業務をこなしているだけで、この先の未来も戦っていけるのか疑問ですし、自分自身もいろいろな経験をしたいと思っています。一歩会社の外に出てみると「こんなことが起きているのか!」という発見もあって刺激を受けています。

私が認知症予防に興味をもったのも、プロボノで協働した仲間がきっかけだったんです。

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東京レインボープライドチームのメンバーと

その仲間が始めた新規事業に協力する際に認知症のことを調べてみると、根深い課題がたくさんあることを知りました。さらに、認知症予防は40代から始めると効果的であるということも知り、自分も40代なのでより関心を持ったんです。そんな学びもあり、現在は認知症予防の促進や、たとえ認知症になっても安心して暮らせるようなまちづくりをしていきたいと考えています。老いは誰しも必ずくるものですし、自分だけでなく家族の健康維持を考えるきっかけにもなる。プロボノから生まれたつながりから、体の健康を考えるようになっただけでなく、自分にとって関心のあるテーマを見つけることもできました。

仕事面だけでなく、プライベートでの世界も広がったと感じていて。プロボノで出会った仲間と共通の趣味もあって、イベントや講座に一緒に参加することもあります。最近では、コロナ禍の影響から家で過ごす時間が増えたので、“こもり上手”になるための講座にも仲間と一緒に参加しました。他にも、試写会などの文化的な活動や防災に関するテーマの取り組みに参加したこともあります。

一歩会社の外に出て、新たな分野や多様な人と出会う。いつもと違う場所で自分のスキルや知識を活かしてみると、意外なところで力を発揮するかもしれません。昨今「アート思考」や「イノベーション」などの言葉もありますが、仕事と余暇を分断しすぎず、広い視野で物事に向き合うことが、これからの社会を生きる上で必要だと思うんです。発想力の幅を広げたり、自分の興味や関心をもっと掘り下げたりするには、プロボノはとても親和性の高い挑戦のあり方だと思います。

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東京レインボープライドのチームメンバーと
パレードにも参加

「子どもの貧困」「認知症との付き合い方」など、周りを見渡せばさまざまな社会課題がある。一方で、自分ごととして捉えるにはまだまだ距離が遠いものも多い。プロボノは、まだ見ぬ自分の可能性に気づかせてくれるとともに、社会と自分との距離をグッと近づけ、地域の一員として生きる最初の一歩になるかもしれない。

池田さんが参加したプロボノプロジェクト

東京レインボープライドのさらなる活動の可能性を検討し、オリンピック・パラリンピックを迎える2020年までを1つの節目に、団体として目指す社会、そのために必要な運営体制など、今後の基盤を固めていくための事業計画づくりに取り組みました。

困難を抱える子どもたちへの居場所や学びの機会を提供する居場所サポートクラブ ロベに、企業から支援を得るための営業資料を作成しました。