誰かの役に立つ経験が、熱意をさらに高める。
挑戦する姿勢へと変えてくれたプロボノ

従業員プロボノ参加者 藤井 紀さん

途上国生産者の農作物や製品を適正な価格で継続的に取引することで、生産者が自らの力で生活を改善していけるよう「フェアトレード」の仕組みを運営するNGO「フェアトレード・ラベル・ジャパン」。
フェアトレードラベル運動を通して理念を広め、企業・市民・行政の意識改革や、地球環境と途上国の人々の生活を守るために公正な貿易構造を根付かせる活動を行っている。
今回、藤井さんが試しに応募したプロボノ参加を通じて、新しいことを始める時の姿勢が変化したというプロボノ参加前後の変化を聞いた。

まず「役に立つ」ことで、活動への熱意がさらに高まる

私が参加したプロジェクトは、「フェアトレード」を活動内容とするNGO「フェアトレード・ラベル・ジャパン」への支援でした。「フェアトレード」とは、地球環境と開発途上国における生産者・子どもたちを取り巻く諸問題を解決するために、公正・適正な価格の取引を行う仕組みのことです。
私自身、それまではボランティア活動や国際支援活動に興味があったわけではなく、プロボノに参加した理由も“なんとなく”というのが正直なところでした。一方で、チームメンバーの中には高い志を持って応募している人もいたため、不安も感じていました。

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藤井 紀さん

しかし、プロボノを通じて、誰かの役に立つ経験をすることで、興味や熱意がより湧いてくることもあるのだと教えてくれました。例えば、プロボノで出会ったある人がこんな体験談をしてくれました。「プロジェクトを円滑に進めるためには、一緒に取り組むメンバーが必ずしも活動内容に初めから興味がある必要はなく、その活動に必要なスキルを持っている人を集めることの方が大切だ」と。その方は、学生時代からフェアトレードに関する活動に取り組んでいたのですが、「興味は後からついてくる。リーダーとして、一緒にプロジェクトを進めるメンバーに興味を沸かせるプレゼンテーションくらいできないと、社会に広めることは到底できない」という姿勢で、協力する仲間を集めていたのです。

参加したプロジェクトでは、過去の仕事で行なっていたウェブサイト制作のスキルが思いのほか重宝されたり、ヒアリングのための資料作りやメール作成といった基本的なビジネススキルを活かせる場面がありました。私自身、もともとフェアトレードに関心があったわけではありませんが、スキルがあればお役に立てるというのは、新たな発見でした。それ以来「興味がないとやらない」ではなく、誰かの助けになることや、自分の成長につながりそうなことはチャレンジしてみようと思うようになりました。

対話を重ねると見えてくる、支援先が抱える本当の課題

プロボノで苦労した点の一つが、本当に解決すべき課題は何かを見極めることでした。NGOからの依頼内容は、フェアトレードを広めるためのパンフレット制作でしたが、ヒアリングを通じてやりたいことや課題がよりはっきりと見えてきたため、パンフレットの目的を整理する必要がありました。

日本国内では、フェアトレードの存在自体は以前より認知されているものの、フェアトレードのラベルが貼られた商品を購入する人は海外に比べて少ない現状があります。値段や種類の少なさから、一般の方にたくさん購入してもらうことはまだまだハードルが高い商品ともいえます。一方で、企業の社屋にある食堂や売店、喫茶室等で取り扱うチョコレートや、コーヒーなどにフェアトレード商品を採用してもらうことは、企業にとってはSDGsに貢献する取り組みとして謳える側面もあり、比較的ハードルが低いのではないかという仮説を立てました。そこで、まずは企業向けのパンフレットを作る方向に話は進みました。

しかし、さらに外部団体等へのヒアリングを重ねると、商品紹介をするパンフレットよりも、営業先企業の社内稟議書に使う資料を作る方が、効果的に導入につながるとわかったんです。企業がフェアトレード商品の導入を決めるためには、頭で情報を理解してもらうだけでなく、共感が必要です。この活動が誰の支援に繋がっているのか、日本と欧米でどのくらいフェアトレード商品の消費金額に差があるのかなど、具体的な情報も交えた資料を作りました。また、その制作物からさらに派生し、社内でフェアトレード商品を扱っていることを、社内外に告知、PRできる新たな制度の設計や、その制度の詳細を案内、申し込みをするためのウェブサイトのデザインカンプも作りました。

プロボノ支援先団体の皆さんが何を望んでいるのかは、こちらから質問をぶつけてみないとわからないこともあります。課題や目的を深掘りすることが重要なのだと実感しました。

ドラマの世界の話ではない。開発途上国支援に本気で向き合う人との出会い

ボランティアと縁遠かった自分にとって、国際支援の現場で活動する人はドラマの中でしか見たことがない存在でしたが、そんな人たちが実際に社会で活動しているのだと実感しました。プロボノを通じて普段なかなか関われない人と出会えたことは、私にとって大きな財産です。
中でも、フェアトレード・ラベル・ジャパンの事務局長の潮崎さん、前事務局長の中島さんとの出会いは本当に印象的でした。
お二人とも、フェアトレード活動を始める以前から、海外のボランティア活動に従事され、まるでドラマの主人公の様な方々でした。
もちろん他のヒアリング等に協力いただいた方や、一緒にプロボノ活動を行ったメンバーも素晴らしい方ばかりでした。

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フェアトレード・ラベル・ジャパンさんとの記念写真

プロボノは、自分のありのままのスキルを試せる場所

会社の仕事では、社内に蓄積されているノウハウや既にある関係性も活かしながら仕事をすることができます。一方プロボノでは、初めて出会う人たちと、取り組んだことのない分野の仕事をします。そんなはじめてづくしの環境だからこそ、自分のありのままのスキルを試せる場所でもあると感じました。

プロボノに参加する前は、自分が持つスキルをはっきり言い切れるほどの自信がなく、支援先団体の期待に応えられるか不安でした。しかし、過去行なっていたウェブサイト制作のスキルで思っていた以上に貢献することができ、自信につながりました。また、会社の肩書きがない場所でも、もっと活躍できる人材になれるよう、ウェブサイト制作に関する知識を基礎から学び直すための講座の受講も始めました。プロボノを経て、自分にできること・できないことの棚卸をすることができました。

普段当たり前のように行なっていることが、意外にも誰かの役に立つことがあります。プロボノへの参加を迷っている人には、テーマへの関心の有無に関わらず、自分の持つスキルを試す場としてぜひ挑戦してみてほしいです。

なんとなく応募したプロボノをきっかけに、新しいことに挑戦する姿勢まで変化した藤井さん。はじめの一歩さえ踏み出せたら、その先には思わぬ発見や出会いがある。自分の視野や活動の幅を広げるためには、ほんの少しでも心に引っかかったことから始めてみることが重要かもしれない。

藤井さんが参加した社内のプロボノプロジェクト

途上国の生産者が貧困に打ち勝ち、自らの力で生活を改善していけるように、フェアトレードラベル運動を通して企業・市民・行政の意識改革をし、フェアトレードの理念を広め、より公正な貿易構造を根づかせるために活動を行っているフェアトレード・ラベル・ジャパンに対して従業員8人がフェアトレード商品の社内消費を促す提案書と制度設計を応援しました。