地理や地形への興味が、プロボノへの出発点。
自然保護の取り組みに共感し活動を通して得た、“多角的な視点” と“つながり”

従業員プロボノ参加者 青木 瑞紀さん

システムエンジニアとして仕事に従事していた青木さん。当時はまだ入社4年目ということもあり、プロボノ参加を躊躇していた。今では「絶対に参加したほうがいい」と言い切る青木さんが、参加へと踏み出すまでの経緯、そして、プロボノで何を得たのかを聞いた。

自分の趣味と“好き”を活かしたプロボノに参加

もともと、プロボノには興味があり、その存在を知ってはいたのですが、私自身、当時は社会人4年目だったこともあり、社会人経験が浅いのではないか?専門知識が不足しているのではないか?などと、色々不安が大きく、ハードルが高いイメージでした。しかし、説明会に参加したら、若手で活躍されている方もいらっしゃることがわかり、不安が払拭されました。また、当時、社内でDEI推進リーダーをしていたこともあり、みんなが自分らしく働くことや、自分にできることは何かを考えるようになったことも大きかったと思います。

※DEIはDiversity(ダイバーシティ、多様性/Equity(エクイティ、公平性)/Inclusion(インクルージョン、包括性)の頭文字をとったもの。企業経営において、社員それぞれが持つ多様な個性が最大限に活きることがより高い価値創出につながる、という認識が近年拡がりつつあり、DEIの取り組みが推進されています。/Panasonic HPより)

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青木 瑞紀さん

私がプロボノメンバーとして参加したのは、島根県松江市を中心に活動している認定NPO法人自然再生センターの支援プロジェクトです。こちらの法人では、中海と宍道湖の環境改善を推進し、自然再生を通じ、自然と人々の関係の再構築に取り組んでいます。また、中国電力と協力し、窪地の水質改善事業をしたり、中海・宍道湖流域の食材の発信やオゴノリなどの海藻を肥料として活用し農作物を育てたりするなど、企業との協働事業から、地域と共に開催するイベントまで幅広く活動しています。このNPO法人へのプロボノプロジェクトに参加した理由は、その活動内容に魅力を感じたことがひとつ。また、自分が好きな地理や地形などに関連する団体であったことも、きっかけのひとつです。私自身、ジオパークが好きで、趣味でジオパーク巡りをしているんです。中海、宍道湖地域は日本ジオパークに認定されているんですよ。

(*ジオパークとは、地球科学的意義のあるサイトや景観が保護、教育、持続可能な開発のすべてを含んだ総合的な考え方によって管理された、1つにまとまったエリアのこと/日本ジオパークネットワークHPより)

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オゴノリの刈り取りの様子

マーケティング基礎調査を通し、見えてきた課題と解決の糸口

認定NPO法人自然再生センターが、プロボノに求めていたのは、マーケティング基礎調査でした。ステークホルダーにとってセンターの活動や存在がどのように評価されているのかが明らかではないという点が課題となっていたのです。例えば、開催されたイベントに対して、参加者がどのような思いを持っているのかがわかりませんでした。また、センターへの期待やセンターが実施している事業の認知度も不透明だったので、そこを把握したいというのが要望でした。

コロナ禍だったこともあり、オンラインでミーティングを重ねつつ、実際に松江へ行き、イベントにも参加しました。センターの理事の方や、イベントに参加された方、また漁師の方や大学の先生など、共に活動している関係者の方をご紹介いただき、お話を聞く機会をいただいたんです。内容を整理して見えてきたのは、それぞれの立場の人たちがセンターに対して期待していることが異なっていることでした。さらに理事の方の意見を伺いながら、会員に対し、「イベントの周知が徹底されているか?また、親しみを感じているか?」など、センターの活動の認知度やセンターへの理解に関するアンケートを作成。

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団体訪問時の様子

そして、アンケート結果をグラフなどで可視化したあと、理事のみなさんが感じている部分と会員の方やステークホルダーの方々が感じている部分の“ズレ”や合致している部分をわかりやすくお伝えしました。“ズレ”に関しては、理事の方々の思いや考え方などが、支援者に伝わっていなかった部分もありましたので、そこを整理し、最後に意見交換のワークショップを開催しました。このような基礎調査を終えてセンターで取り組まれたのは、情報発信の工夫です。Instagramなど、SNSの発信方法を増やしたり、発信内容も読み手目線にしたりと、広報の在り方全体を改善されているなという印象を強く感じています。

“チーム”だからできたこと。システムエンジニアとしての飛躍の一歩に

パナソニックグループ内から参加した4人と共に活動したのですが、このチームは皆が初対面にもかかわらず、大変仲が良く、様々なことについて積極的に話ができた点は良かったですね。このチームだからこそ、半年間、最後までやり抜くことができたのでないかと感じています。また、自然再生センターを通し、NPO法人の活動内容を知ることができたことも大変勉強になりました。普段、仕事ではNPO法人の方と関わることはありません。法人の職員さんに加えて、大学の先生、県の職員さんなど、様々な立場の方と接点を持ち、学べたことは大変貴重な経験でした。色々な視点や、新しい視点から物事を見るという習慣が身に付きましたね。今回の支援先団体との繋がりがすごく刺激になった部分もあり、自分の中でも、非常に良い経験でした。

また、プロボノプロジェクトの最終報告書を作る際に、意見をまとめ、資料に落とし込んでいく作業は仕事にも活かせると感じているところです。アンケートをとったり、インタビューしたりすることは、自分の仕事上では経験したことがなかったので、今後、システムエンジニアとして、UI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を改善する際など、ユーザーリサーチをする上で役立つのではないかと思っています。

グループ内でも広がるコミュニティの輪。そして、支援先は“ふるさと”に

約半年間、初対面で世代も職種も違うメンバーと共に活動し、プロジェクトをやり切ったことは、すごく良い経験だったと思っています。普段は、自分の所属部署の人としか関わらないので、他の部署、メンバーがどういった仕事をしているのか、全くイメージがつきませんでした。しかし、この活動を通し、メンバーの仕事内容を具体的に知ることができ、“つながり”を持てたことで、社内のコミュニティが広がった感じがしますね。

経験者として、周りの同僚たちを中心にプロボノの魅力を伝え、「興味があればぜひやったほうがいい」と勧めています。ハードルが高いなと思っても、自分の興味や、やりたい気持ちがあれば絶対やったほうがいい。一緒にやるメンバーもいますし、上手くいくにしろ、そうでないにしろ、良い経験になると思います。最初の一歩は勇気がいるかもしれないですが、ぜひ多くの人に挑戦してもらえたらと思っています。

実はプロボノが終わってから、自然再生センターの賛助会員になりました。今でもSNSへコメントしたりしています。直接関わりを持つ機会はなかなかありませんが、終わってからも、そういう“つながり”を持てたのは良かったと思います。センターがある松江にふるさと納税もしたりして、「第2のふるさと」みたいになっています。

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団体の皆様との記念写真

はじめは、躊躇いながらもプロボノに参加した青木さん。仕事とは異なる経験でのプロボノ活動を通し、多角的な視点で物事が考えられるようになったと話す。また、メンバー同士の仕事内容は違っても、「パナソニック」が大事にする理念は共通であることを再確認する機会となった。

青木さんが参加したプロボノプロジェクト

住民・企業・行政・専門家等と連携し、中海・宍道湖流域の自然環境の再生と、かつての湖と人々の親しい関係を再構築するために「オゴノリング大作戦」事業、中海・宍道湖の食を広めよう会、天神川の水草刈り&生き物観察会、次世代につなぐ環境教育などを行っている。 地域市民からの共感度や、どのような活動を信頼・期待されているのかなど、従業員5人によるプロボノチームが調査分析に取り組んだ。