Panasonic NPO/NGOサポートファンド
for SDGs 贈呈式
世界で拡大する貧困の解消に取り組む
12団体への助成が決定

2025年1月24日、パナソニック東京汐留ビル(東京都港区)にて、「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の贈呈式を開催しました。
「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」では、SDGsの大きな目標である「貧困の解消」に向けて取り組んでいるNPO/NGOを対象に、「海外助成」「国内助成」の二つのプログラムで、組織課題を明らかにする組織診断や具体的な組織課題の解決、組織基盤の強化などを応援しています。
今年度は53件の応募があり、12団体の皆様への助成が決定しました。会場には助成団体の皆様を始めとし、選考委員の皆様、協働事務局など、45名の方々にご出席いただきました。

●開会挨拶

阪神淡路大震災から30年の今、NPO/NGOが重要な役割

パナソニック ホールディングス株式会社 企業市民活動担当 参与 北川 恵

サポートファンドは2001年の設立以来、一貫して組織基盤強化の支援に取り組み、助成先は490団体となりました。今年は阪神淡路大震災から30年の節目の年です。1995年当時は、今ほどボランティアの基盤が整っておらず、企業として何ができるか、手探りで活動していました。そんな中、全国から多くのボランティアが駆けつけ、市民団体が生まれ、NPO法の制定につながり、今日ではNPO/NGOの皆様が重要な役割を果たされています。
昨年の能登半島地震でも、皆様がいち早く現地に駆けつけ、当社も現地で2回、ボランティア活動を行いました。現地に向かうことが難しい社員約3000人から、寄付も集まりました。
一方、世界では、長期化するウクライナ紛争や中東情勢に加えて、気候変動の影響を受け、世界各地で自然災害が頻発しています。

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パナソニック ホールディングス株式会社
企業市民活動担当 参与 北川 恵

途上国における絶対的貧困のみならず、新興国や先進国でも相対的な貧困と格差が拡大しています。当社では本年度も約2800台のソーラーランタンを無電化地域に届け、現地の教育や自立に向けた機会の創出に役立てていただいています。私どもの活動を推進する上で、NPOやNGOの皆様とのパートナーシップは欠かせません。すべての皆様の幸せの力になれるよう、一緒に活動を続けてまいりたいと考えております。

●選考委員長による選考総評

【海外助成】
組織基盤強化で、社会課題をあきらめない仕組みをつくる

多摩大学 経営情報学部 教授
特定非営利活動法人 NPOサポートセンター 代表理事
松本 祐一 氏

今年度から選考委員長を拝命いたしました。海外助成は応募数が17件で、採択されたのは3団体でした。AfriMedicoはタンザニアを中心に置き薬を展開していて、プロボノを活用しながら、アフリカと日本をつなぐ取り組み、earth treeはカンボジアを中心に学校建設等の活動をしていて、関係性のデザインに着目、新しいマネジメント方法にチャレンジしています。エイズ孤児支援NGO・PLASはケニア・ウガンダを中心に活動し、Web3の技術を使ったDAOの仕組みを活用し、寄付者や支援者とのつながりをつくる取り組みをしています。世の中の新しい流れを取り入れつつ、組織の境界をマネジメントする点が3団体に共通していました。
今はインパクトが重視される時代ではありますが、貧困は有史以来、人間がずっと闘い続けてきた社会課題で、簡単に解決できないからこそ、小石を積み重ねていくような地道な活動が求められます。だからこそ、団体と行政と企業が一緒に、時代を超えて社会課題をあきらめない仕組みをどれだけつくれるかが重要で、そのとき、組織は時を超えていくための装置といえます。

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多摩大学 経営情報学部 教授
特定非営利活動法人
NPOサポートセンター 代表理事
松本 祐一 氏

組織基盤強化はこの装置の持続可能性を高めるための不可欠な活動であり、このファンドの仕組み自体もブラッシュアップしていけるよう、私たち選考委員も努力していきます。

【国内助成】
助成団体には、リーディングNPOとしてさらなる成長を期待

公益財団法人 あすのば 代表理事 小河 光治 氏

私は子どもの貧困に長年関わってまいりまして、2018年から選考委員を務め、今年度から選考委員長となりました。パナソニックグループの創業者である松下幸之助さんは、生産者の使命は、この社会から貧困をなくしていくことだと語られました。こうした企業理念が、この助成事業の屋台骨を支えていることを実感しております。
国内助成は36件の応募があり、新規助成5件、継続助成4件が採択されました。それぞれの団体の課題に真正面から向き合い、今後に向けて挑戦していきたいという深い思いを、応募書類から強く感じました。採択された団体を見ると、所在地は日本各地に広がっていて、事業分野も多様でした。助成対象となる事業のテーマは、各団体の事業の継続期間や財政規模、人的リソース、事業の特徴、団体が抱えている現状と課題、今後の目指すべき姿などをしっかり勘案した上で検討していることが十分に評価できるような内容でした。

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公益財団法人 あすのば
代表理事 小河 光治 氏

助成を受けた団体には、組織基盤強化を進めることで目指すべき次のステージへと移行していただき、自団体の発展のみならず、同じ分野で活動する全国各地の団体や、活動地域の幅広い分野の団体などに大きな影響を与えるリーディングNPOとして、さらなる成長を遂げてほしいと願っています。

●助成通知書の贈呈

続いて、海外助成と国内助成の選考委員の皆様をご紹介し、今年度、助成を受けることが決まった12団体の皆様に、パナソニック ホールディングス株式会社 企業市民活動担当の北川参与より、助成通知書を贈呈しました。

写真:助成通知書贈呈の様子
写真:助成通知書贈呈の様子

●組織基盤強化 事例発表

業務を整理し、寄付者データベースを整備
職員が組織全体を意識し、寄付にも変化

特定非営利活動法人 こどもソーシャルワークセンター 理事長 幸重 忠孝 氏

私たちは滋賀県大津市を中心に、ソーシャルワークという手法を活用して、貧困などさまざまな環境によって力を発揮できない子ども・若者に居場所を提供し、地域の福祉の推進に寄与することを目的として活動しています。NPO設立から最初の2年は細々と活動していましたが、休眠預金を活用した事業を始めた2020年度から組織が急拡大し、財務が煩雑になってきました。そんな中、要になっていた職員が結婚で退職し、続いて若手職員が休職する中で、労務環境について内部調査を行うことに。内部調査後に、理事会からの要望でサポートファンドに応募し、組織基盤強化に取り組むことになりました。
まずは外部のコンサルタントを入れて、組織診断を行いました。職員に個別にヒアリングを実施し、ソーシャルワーク部門と事業コーディネート部門の業務を整理。ソーシャルワーク部門に電子カルテを導入し、月に1度、職員会議後に組織運営のグループワークを行ったところ、職員が組織全体のことを意識するようになりました。

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特定非営利活動法人
こどもソーシャルワークセンター
理事長 幸重 忠孝 氏

専門の事務職員がいないため、情報発信やファンドレイジング部門が弱く、寄付者のデータベースもばらばらで、せっかくの応援団からの支援を得られず、寄付が半減していることも課題でした。
そこで組織基盤強化1年目は、セールスフォースを活用して寄付者のデータベースを整備し、ホームページの改訂や団体紹介の冊子づくり、テレワークを活用した事務職員の体制づくりに取り組む予定でしたが、再び休職者が出たことから予定を半年延ばし、データベース整理の仕事は、休職者がリハビリ的に行っていくことになりました。法人のこれまでの流れと成長を見える化したことで、職員全体で共有でき、データベースが機能し始めた2023年11月以降は寄付も伸び始めました。組織基盤強化の最終年である今年は、組織の職員が連携しながら、長く働き続けていける体制を強化していきたいと思っています。