日本とフィリピンをつなぐ「特定非営利活動法人イカオ・アコ」
活動を市民に伝える広報活動に関する事業計画を立案

パナソニックグループは、従業員の仕事のスキルや経験を活かして、NPO/NGOの事業展開力の強化につながる情報発信や業務基盤構築の支援にチームで取り組む「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」を2011年4月から展開してきました。
今回は5人がチームを組んで、「特定非営利活動法人イカオ・アコ」を支援しました。プロボノチームは、団体の活動を市民に広く知ってもらう広報活動に関する事業計画を立案するために、2024年7月6日から、内部環境のヒアリングや活動現場の見学・体験を実施し、現状を把握。その結果をもとに、10月6日に中間提案を行いました。この提案に対するフィードバックと承認を経て、12月15日にワークショップを開催。団体からのフィードバックをもとに成果物を完成させ、2025年1月19日に最終報告会を行いました。

フィリピンで植林活動やスタディツアー
日本の市民に向けた情報発信が課題


「特定非営利活動法人イカオ・アコ」は、日本人とフィリピン人が協働で持続可能な社会を創造することを目的に、1997年からフィリピンのネグロス島やボホール島で、マングローブの植林活動に取り組んできました。イカオ・アコは現地の言葉で「あなたと私」を意味します。
フィリピンでは、マングローブ林の再生事業によって環境問題の解決を図るのと並行して、住民の生活の質を向上させるために、安全な水の供給や農業の6次産業化、ゴミの減量化などにも力を注いできました。
日本とフィリピンをつなぐ事業として、日本からの修学旅行生にホームステイをしてもらい、フィリピンの高校生たちと交流する機会を提供するスタディツアーや、ボランティアの受け入れも行ってきました。そして2019年には、「Panasonic NPO/NGO サポートファンド for SDGs」の助成を受け、2年間にわたる組織基盤強化に取り組みました。

その一方で、日本国内においては、市民との接点が少なくなったことに課題を感じてきました。団体の活動をより多くの市民に知ってもらい、市民の力を活動に活かすためにも、ステークホルダーに向けて、情報ツールを有機的に連動させた情報発信を強化していく必要がありました。そこには、世代交代を見据えた組織体制を整えていきたいという思いもありました。そこでプロボノチームは、広報活動に関する事業計画を立案することにしました。

内部・外部環境調査から広報活動の現状を分析
見た人が行動したくなる情報発信の方法を提案


プロボノチームは初めに、イカオ・アコで活動している3人を対象とした内部環境のヒアリングを実施。さらに、活動現場の見学やスタッフとの議論を通して、広報活動の現状や団体の課題、理想とする姿を深掘りしていきました。その結果をもとに、内部環境の評価と目標仮説の設定を行い、2024年10月6日に中間提案として、今後の方針を検討しました。加えて、外部環境調査として、他団体の広報活動の現状についても聞き取りを行いました。
これらの報告に対するフィードバックと承認を経て、12月15日にワークショップを開催。40ページ以上にわたる資料を提供し、InstagramやFacebook、ホームページなどの改善項目について、一つひとつ改善案を説明しました。これを受けた団体側からのフィードバックをもとに成果物を完成させ、2025年1月19日に最終報告会を行い、納品しました。

最終報告会で、プロボノチームはまず、イカオ・アコの活動に関する現状を分析。「環境事業の推進を通じ、地域社会の問題解決に貢献する」という目的を達成するうえでの課題点として、「新規ステークホルダーの獲得」と「活動サポーターとの協業による事業の確立」の2点を挙げました。この解決策として、「フォロワーの獲得を通じて支援者を増やす」「個人寄付者を獲得して助成金以外の資金源を確保する」といった具体的な方法を提案。次のアクションにつながる発信ができていないことが問題であると指摘しました。

現状の打開策として、プロボノチームは消費者の行動モデルである「AISAS」に着目し、Attention(注意)・Interest(興味)・Search(検索)・Action(行動)・Share(共有)のプロセスに合わせて発信を行うことで、見た人に行動してもらえるようになることを示しました。
そのための広報計画提案として、「活動の見える化」「実現に向けたリソースの確保」「外部発信ソフトの強化」という3つの柱を立て、それぞれについて、ステージ1「検討する」・2「既存の方法を反映する」・3「広報活動を活性化するために、あるべき姿に変えていく」という3つの段階でできることを例示。共感を得やすくする事業KPIの設定やインターン募集の具体的な方法について提案しました。

新規サポーターを獲得するにあたっては、ユーザー層や使用年齢層から見ても、すでに行っているInstagramやFacebookなどに絞って情報発信したほうが有効だと考え、「ターゲットを明確にする」「ハッシュタグを有効活用する」「動画やライブ配信を活用する」など、7つのポイントを挙げました。さらに、寄付プラットフォーム「シンカブル」やホームページ、LINEの強みや具体的な改善案についても紹介しました。
そして最後に、伝えたいメッセージを明確にし、寄付までのパスを用意し、発信内容をより検索されやすいものに繰り返し改善していくことが重要であると強調しました。

最終報告を受けての感想


後藤 順久さん(イカオ・アコ理事長)

私たちは問題を解決する言葉をなかなか見つけられずにいたのですが、半年間しっかりサポートして、その言葉を的確に示してくださったのが今回の最終報告だったと思っています。この半年の間にも、日本政府がイカオ・アコの炭焼きの調査プロジェクトに関心を示したり、クリエーターの方がライフワークでサポートしたいと連絡をくれるなど、いろいろな方からのアクセスがあり、広報にも使えそうなコンテンツが、どんどん増えていっています。ご提案いただいた内容を実現できるような状況を責任もってつくっていきたいと思っています。今後もホームページやFacebook、Instagramなどをのぞいていただけたら幸いです。

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イカオ・アコ
理事長 後藤 順久さん

二角 智美さん(イカオ・アコ理事)

長期間にわたり、ありがとうございました。日本国内で働いている団体の職員が3人ということで、人数が少ないと視野も狭くなりがちで、アイデアもなかなか出てきません。NPO/NGOにはありがちなことかもしれませんが、思いが強すぎて、突っ走っていくこともあるかと思います。皆さんにとっては当たり前のことかもしれませんが、数字やデータで論理的に整理して提示するという、本当に大切なことを教えていただきました。これで終了にはなりますが、皆さんからいただいたご提案をちゃんと実行し、活用するために、内部で引き続き、しっかり話し合いながら形にしていきます。もしよろしければ、皆さんと一緒に、フィリピンで植林活動をできたらいいなと思っています。

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イカオ・アコ
理事 二角 智美さん

木村 容子さん(イカオ・アコ事務局長)

私が広報を担当していた際は、広報=情報発信すればよいという認識でした。
AISASの概念も知らず、ハッシュタグの重要性を考えたこともなく、タスクとして各種SNS等で情報発信をしてきただけでした。
皆さんのサポートを受けて、ターゲットを明確にして、団体に興味を持ち、アクションを起こしてもらえるように価値のある分かりやすい情報を発信することの大切さを学ぶことができました。情報発信の方法、工夫等、数々の改善提案を詳細に教えていただき、感謝の念に堪えません。いただいたアドバイスを実装し、 自走できるように、資料・ツールをいただけることも大変心強いです。今後、団体として、皆さんからいただいた知見とお時間を生かせるようにできるところから取り組んでいきたいと思います。この度は本当にありがとうございました。

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イカオ・アコ
事務局長 木村 容子さん

プロボノチームの感想


  • 小宮 拓人さん
    僕は会社員2年目で、一番若いこともあり、至らないところもあって、いろいろとご迷惑をおかけしました。実際にイカオ・アコさんのところにもお邪魔して、普段関わらないような方々からも、お話をうかがうことができました。自分としては、まだまだ能力が足りないと思いつつも、皆さんのお力を借りながら、今回の最終提案というところで、一定の成果を出すことができました。本当にありがとうございました。
  • 武長 香菜子さん
    長いようで短い間でしたが、本当にありがとうございました。月に1度ほど、奈良の里山保全の活動に参加する中で、環境問題に関心をもつようになりました。そして今回、プロボノの存在を知り、イカオ・アコさんに協力させていただきたいと思って参加しました。日本国内だけでなく、フィリピンの現状についても学ぶことができ、わずかなからご支援もさせていただけたことに感謝しております。せっかくご縁ができたので、これからもFacebookを拝見し、個人的に寄付にも参加させていただきたいと思っています。
  • 鈴木 徳宏さん
    約半年間ありがとうございました。私はビジネスアナリストという立場で参加させていただきました。普段の仕事では限られた範囲でデータ分析をおこなっているのですが、今回の活動でまったく別の見方でデータを見るという、非常にいい経験をさせていただきました。また、環境問題やNPO/NGOにはあまり関心を持っていませんでしたが、プロボノに参加したことで、どういうことが世の中で起きているのか理解でき、大変勉強になりました。これを機に、この先どのような活動をしていくのか考えていきたいです。
  • 川上 朋広さん
    私にとっては、このような活動は初めてで、非常にいい経験をさせていただきました。今後も、社会に貢献する活動を継続していきたいと思っているので、今回のプロボノによって、そのためのいいベースができました。いろいろな形のボランティアがあるのだとは思いますが、今回のような形での社会貢献については、いい経験を積むことができました。ここで得たノウハウを今後も活かしていきたいと思っています。ありがとうございました。
  • 田中 慶一朗さん
    プロボノに初めて参加し、多くの至らない点や学びがありました。目の前の問題にとらわれず、社会全体を見る視点の重要性を実感しました。今後も成長し続けたいです。
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最終提案を終えたプロボノメンバーとイカオ・アコの皆様

NPO法人 イカオ・アコ


1997年、任意団体としてフィリピン西ネグロス州シライ市をベースに活動を開始。日本人とフィリピン人が国境を越えて協働し、環境保全活動に取り組む。現地住民が活動継続資金を自己調達できるように、職業訓練や収入向上支援も行っている。