パナソニックは2021年7月12日から15日の4日間、オンラインにて「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs 20周年記念 シンポジウム・ウィーク」を開催しました。最終日15日の締めくくりとなったクロージングには、200人を超える皆様から参加の申し込みをいただきました。クロージングでは、各セッションでモデレーターを務めた皆さんに再びご登場いただき、今回のセッションを踏まえた今後の展望をお話しいただきました。

●各セッションのモデレーターによる「今後の展望」

●子ども分野

179件の実績とパートナーシップを次のプログラムへ

子ども分野は20年間に179件の組織診断・組織基盤強化事業を応援し、その助成総額は2億2,318万円になります。13日の基調講演では坪井節子さんが、子どもの人権、子どもと大人の対等なパートナーシップ、子どもを真ん中にした多機関のスクラム連携の大切さ、サポートファンドで学んだ組織基盤強化に必要な6つの視点「ニーズの把握」「理念の言語化」「組織内コミュニケーション」「ファンドレイジング」「多機関との連携」「次世代への承継」について、お話しくださいました。
子ども分野が大切にしてきた、当事者との対等なパートナーシップ、当事者を真ん中にした多機関の連携という視点を「for SDGs」のプログラムに、どう承継していくかが重要だと思います。

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特定非営利活動法人
市民社会創造ファンド
シニア・プログラムオフィサー 坂本 憲治 氏

●環境分野

二極化する環境NPO/NGO、企業との新たな連携を模索

14日のセッションでは、地球温暖化やプラスチックごみの問題など、深刻化する環境問題への関心が高まる中、環境NPO/NGOは二極化するだろうという議論がありました。マイノリティの視点で環境問題を監視し、告発する団体も必要な一方で、脱炭素化に向けた政府の巨額な資金を活用して、社会変革を起こす団体も出てきてほしいと思います。今や企業も環境問題に真剣に取り組まないと、市場から評価されません。サポートファンドの環境分野における助成プログラムが終わった今、組織基盤強化の資金提供者を探すのが今後の課題ですが、助成に限らず、投資型の資金提供も含めて考える時期に来ているのかもしれません。

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特定非営利活動法人
地球と未来の環境基金
理事長 古瀬 繁範 氏

●アフリカ分野

支援者の増加に現れ始めた広報基盤強化の成果

アフリカ分野のセッションでは、助成した23団体の代表として2団体が事例報告を行ったあと、選考委員として10年関わった稲場雅紀さんが、アフリカに対する固定観念を捨て、世界やアフリカがどういう課題に直面しているのか見極めることの重要性をお話しくださいました。私たちNGOは現場で汗をかくだけでなく、アフリカのことを知らしめ、日本で支援者を育んでいく必要があります。組織基盤強化の中でも広報に特化したアフリカ分野の取り組みの成果は徐々に現れ始めていて、JANICが集めている統計でも、アフリカに関心をもつ団体や支援者が増えてきています。アフリカ分野の取り組みは、今後JANICが事務局を務める海外助成プログラムへもつなげていきたいと思います。

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認定特定非営利活動法人
国際協力NGOセンター(JANIC)
コーディネーター 松尾 沢子 氏

●オープニングセッション

生みの苦しみの先に大きな社会的価値をもたらす組織基盤強化

初日に、20周年節目評価の報告をしました。このプログラムは、終了後もしつこく「助成当時はどうでしたか? 今どうしていますか?」と聞き続けるプログラムで、聞けば聞くほど、組織基盤強化の生みの苦しみを思わずにいられません。助成期間中に先が見えなくなったとか、怒涛の涙を流したといったお話も聞きましたが、コンサルタントや助成事務局、他の助成団体とのネットワークで乗り越え、多くの気づきを得たと皆さん、おっしゃっています。組織基盤強化への助成が最終的には大きな社会的価値を生み出すことを、皆さんが身をもって示してくれました。

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公益財団法人
パブリックリソース財団
事務局長 田口 由紀絵 氏

●NPO「支援力」応援プログラム

相談の背景にある組織の問題と向き合える支援者を育成

セッションでは、第三者としてNPOを支える3人にお話をうかがいました。その中で、見える課題は真の課題ではない可能性があるというお話がありました。支援者には会計・広報・ファンドレイズなどの相談が寄せられますが、背景に組織自体の問題をはらんでいることがあり、そこに向き合わない限り同じ相談が繰り返されます。適切な距離感で、いざという時に相談できて、少し広い視点を提供してくれる人がいると、NPOはより発展すると感じました。
NPO「支援力」応援プログラムは95人の支援者を輩出しましたが、これからも多様な特技をもつ支援者がNPOに向き合ってくれたらと期待しています。

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認定特定非営利活動法人
日本NPOセンター
事務局長 吉田 建治 氏

●プロボノプログラム

SDGsの時代に欠かせない市民セクターとの協働

セッションで印象に残ったのは、プロボノプログラムに参加したパナソニックの社員の皆さんと支援を受けた団体の皆さんのチームとしての一体感と、信頼関係が端々に感じられるやり取りでした。登壇された以外の支援先団体や社員の皆さんへのアンケートも、近いうちに公開予定です。日本ではまだプロボノに取り組む企業は少数派ですが、SDGsの時代に市民セクターとの協働は欠かせません。これからもパナソニックには組織基盤強化のリーディングカンパニーとして、たとえば海外の団体への支援や、支援からさらに踏み込んだNPO/NGOとの協働の取り組みなど、新しいチャレンジを続けてほしいと思います。

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認定特定非営利活動法人
サービスグラント
代表理事 嵯峨生馬 氏

●総合事務局より

20年間地道に継続し、つないだバトンを次の時代へ

モデレーターや参加者の皆様、4日間ありがとうございました。この20年間を早送りで追体験し、新しい取り組みがすぐには理解されず、浸透せず、成果が出なくても、地道に継続することの大切さを改めて感じました。船や木の根っこにたとえられる組織基盤は普段はなかなか見えなくて、見えた時には事故や問題を起こしていたりします。水面下がしっかり確立されてこそ、見えているところが大きく隆々と育っていくのだと思います。その生の事例をサポートファンドで見せていただき、勇気をもらいました。たくさんの先輩方のバトンリレーの賜物である20年の取り組みを、次へとつないでいきたいと思います。

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パナソニック CSR・社会文化部
部長 福田 里香

●全体の総括

多彩な団体からの気迫のメッセージを
一人ひとりの力に

特定非営利活動法人 市民社会創造ファンド 理事長
公益財団法人 助成財団センター 理事長
認定特定非営利活動法人 日本NPOセンター 顧問
山岡 義典 氏

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この20年、NPOと共にプログラムが育っていった、その広がりと深さがよく表現された企画だったと思います。
すべてのセッションから、プログラムにかける皆さんの気迫がひしひしと伝わってきました。第3ステージで第三者の組織診断を導入した際には応募が急減し、このまま終わってしまうかもしれないと心配しましたが、そのような危機的な状況にあっても、パナソニックは企画の将来性を信じて継続させてくれました。これほど多彩な団体が集まる機会はそうそうなく、登壇した方や視聴した方一人ひとりの力になったのではないかと思います。「社会変革を生み出せる組織へ」というシンポジウム全体のメッセージが、大変リアルなものに感じられました。実りある豊かな時間をくださった皆様に感謝します。

集合写真