腐食の分析
金属が環境中の水分や酸素などと化学的反応または、電気化学的反応によって変質破壊される現象です。
腐食の形態も、全面腐食、孔食、すき間腐食、粒界腐食、応力腐食割れなど材料および環境によって変わってきます。
当社では、これまでの蓄積した分析技術やノウハウを用いて、腐食発生原因を明らかにすることで、お客様の課題解決のお手伝いをいたします。
分析の流れ
1)腐食発生部の外観観察
- 腐食発生場所の確認。
- 腐食物の色、状態の確認。
2)腐食部の切り出し、もしくは採取
- 切り出し可能な場合は、腐食部を切断し、詳細観察を実施。
- 難しい場合は、腐食物のみを採取し分析を実施。
3)腐食部の詳細観察、腐食物の元素分析
- 腐食部の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、腐食部および腐食物の状態を確認。
- 場合によっては、腐食部を洗浄後の基材表面の観察も実施(孔食などの確認)。
- 腐食物の元素分析を行うことで、腐食を促進するような物質が存在しているかを確認。
4)腐食部の断面観察、元素分析(必要に応じて)
- 腐食部の断面加工を行い、腐食進行の状態を確認。
関連設備
- 走査電子顕微鏡(SEM)
- X線マイクロアナライザ(XMA、EPMA)
局部的な腐食の形態
- 異種金属接触腐食
電極電位が異なる金属が接触し、それに電解質溶液が存在すると卑な金属が腐食されます。これは、異種金属接触腐食あるいは、ガルバニック腐食と呼ばれています。この腐食の程度は、接触する金属の電位差が大きい程、さらに卑な金属に対する貴な金属の表面積が相対的に大きい程、影響は大きくなります。
- 孔食
不動態を保っている金属表面のごく限られた部分にだけ、穴径が小さく、深く進行する腐食です。不動態型の金属に見られ、多くの場合、塩素イオンなどの侵食性アニオンの存在下で発生します。
- すき間腐食
すき間部で溶存酸素が欠乏し、金属表面の不動態膜が破れて、金属の溶解が起きます。不動態膜を保持している外部の表面との腐食電位差が大きくなり、局部電池が形成されて溶解が進行します。すき間部でのpHの低下と塩素イオンの濃縮などが起こり、腐食性が増加します。
- 粒界腐食
不純物や介在物で腐食電位の低い粒界部が腐食されます。ステンレスでは熱影響で粒界部のクロム濃度の低下した粒界近傍で腐食が進行します。
- 応力腐食割れ
引っ張り応力の下で環境の影響を受け、著しく脆化して破断する現象を応力腐食割れと言います。
- 選択腐食
腐食により合金成分の特定元素が選択的に溶出する現象を脱成分腐食、または選択腐食と言います。このような腐食の場合、寸法変化は少ないものの表面に変色が見られ、強度や延性の低下が著しくなる場合があります。
- エロージョン・コロージョン
流動する液体中で発生する腐食損傷です。金属表面の不動態膜が水流で削られ、電気化学的な局部電池が形成されて、腐食を促進されることもあります。
分析事例
- X線光電子分光法(XPS)を用いたステンレス鋼の腐食状態評価
- 異種金属接触による脱亜鉛腐食
- 塩素成分によるステンレスの孔食