ユーザビリティに対する考え方
ユーザビリティとは
ユーザビリティとは、使用者(ユーザー)にとっての商品の使い心地や扱いやすさなどを示す言葉として、主にユーザーインターフェースに対して使用されています。
これに対して私たちは、商品の安全性や、商品使用時にユーザーが感じる感動体験等も含めた、「商品と人との全てのインタラクション(相互作用)」をユーザービリティと考え、ユーザーが商品使用時に感じる感覚を定量化し、商品設計に落とし込むことで、より使い心地のいい魅力ある商品を作ることを目指しています。
そこで私たちは、根本となる要素を、
- 商品が安全であること(ヒューマンセーフティ)
- 無理なく、負担なく使用できること(狭義のユーザビリティ)
- 使用感や見栄えが優れていてユーザーに感動を与えられること(感性価値)
- まだユーザーが気づいていない新しい価値を明らかにすること(新価値創造)
の4段階で切り分けることで広義のユーザビリティとして定義するとともに、各商品が達成すべき要素に応じて、それぞれ最適な手法で評価することで、商品開発をご支援させていただいております。
ヒューマンセーフティ ~製品が安全であること~
世の中には絶対安全はなく、そこに製品がある限り、人は何らかのリスクを負っています。
これらリスクを最小化するために、できる限り安全な商品を開発することは、非常に重要だと考えます。
私たちは、リスクアセスメントに代表される製品の安全性評価手法をベースとして、自動車業界で用いられているダミー人形・独自に開発した手指の挟みこみ試験機・シミュレーション技術の応用など様々な評価手法を取り入れ、事故時の傷害予測を行うことで製品の安全性を評価しています。
傷害の種類は多種多様であり、高齢者や子供など、商品を使用する人も多種多様です。
このようなバラツキを踏まえて、傷害レベルを予測することは非常に難しく根気のいる仕事ですが、より安全な製品を世の中に広げるためにも、傷害を正しく評価するための各種取り組みは全ての人々にとって有益な活動であると考えています。
狭義のユーザビリティ ~無理なく、負担なく使えること~
商品と人がインタラクションするときには必ず何らかの負荷が人にかかります。例えば、トイレや椅子の立ち座り動作では相応の負荷が太ももにかかりますが、負荷の大きさは人によって様々で、特に子供や高齢者にはより大きな負荷がかかることは容易に想像いただけるのではないでしょうか。
このような日常生活において繰り返し使用する商品においては、負荷の積み重ねが利用者にとって大きなストレスとなります。
しかし、商品サイズを使用者に適したサイズに変えることや(身体適合性)、適切な位置に手すりをつけるなど、ちょっとした工夫で今まで感じていた負荷を大きく低減することができます。
私たちは商品使用時の負荷を少しでも減らすため、筋電図解析やデジタルヒューマン技術を利用して負荷の度合いを数値定量化し、商品設計に落とし込む活動を行っています。
これらの技術は、近年ではオフィスのレイアウトや工場の工程改善など、人が動くことが前提とされる空間においても、活用が広がっています。
また、商品のわかりやすさも近年では非常に重要視されています。私たちはユーザーの眼の動き(視線解析)に着目し、説明書を見なくても直感的にすぐ使えるようなボタン配置や画面設計などをご提案させていただいております。
感性価値 ~使用感や見栄えが優れていてユーザーに感動を与えられること~
使い心地がいい、快適、しっくりくる、かっこいい、かわいいなど、製品利用時に人が感じる感覚は様々で、それらを製品設計に落とし込むことは非常に難しいことです。
しかし近年では、UX(ユーザーエクスペリエンス)と言った言葉に代表されるように、感性に訴えかける製品の開発や訴求方法はますます重要性を増しており、売れる製品開発のためには、感性価値を考えることは避けて通れないものとなってきました。
そこで我々は、血流計測や脳波計測に代表される生理計測や、圧力分布に代表される物理計測などにより、ユーザーが商品利用時に感じる感覚や感性の見える化に取組んでいます。
例えば、最近では握り心地を追及した商品が「エルゴグリップ」といった言葉で説明され、多数発売されています。
このような商品に対して私たちはユーザーアンケートによる官能評価と、手のひらに働く圧力分布を結びつけることで、ユーザーが感じた感覚を物理量に置き換え、目指すべき商品の形状や重量を明確化しています。
このように、ユーザーに感動を与える商品を作るためには、目には見えないあいまいな感覚を、商品設計者に伝わる指標に落とし込むことが重要であると考えています。
新価値創造 ~ユーザーが気づいていない価値を明らかにすること~
新しい価値を認め、受け入れるのはいつも商品のユーザーです。であるならば、「ユーザーの発するちょっとした言葉やユーザーの行動を適切に分析することで、これまで表に出ることはなかった新しい価値を創造することが可能になるのでは?」というのがユーザー評価を長年経験し、アンケートや各種定量化手法に精通する私たちが出した答えです。
我々は、ユーザー起点での新しい価値を生み出していくことを目指して、行動観察やアンケート、使用実態調査といったベースとなる技術(強み)を活かしながら、これらを融合して、様々なアイデア創出を行っています。シーズベースドデザインシンキングやギャップ探索など、人間工学の専門家が実現するデザインの世界は、これまでの手法とは異なる新しい価値を生み出すと考えています。
新価値を創造するのは、一部の優れたクリエイターやデザイナーに認められた特権ではありません。