アウトガス試験(宇宙用部材の簡易スクリーニング試験)

人工衛星などに搭載される材料、部品は、宇宙空間では真空環境下に暴露されます。このような空間で、材料、部品からの脱離ガスがレンズなどの光学機器の表面に付着した場合、光学性能の劣化に繋がります。また、電子機器に付着すると、信頼性や性能に影響を与えます。そのため、宇宙用途の製品開発を行う場合、他の宇宙機器へ悪影響を及ぼさない材料、デバイスを選定するために、アウトガス試験を行う必要があります。

宇宙イメージ

宇宙環境下のアウトガス試験法としては、米国航空宇宙局(NASA)が推奨している試験規格(ASTM E595)があり、真空下加熱前後の質量損失比(Total Mass Loss:TML)、コレクタプレートに付着した再凝集物質量比(Collected Volatile Condensable Material:CVCM)、加熱後の再吸水量比(Water Vapor Regained:WVR)がそれぞれ1%以下、0.1%以下、0.5%以下という基準が設けられており、重量変化が基準値を満たすことが求められます。

この度、これらの3つの指標のうち、質量損失比(TML)と再吸水量比(WVR)を簡易的に、スピーディに評価できる手法を開発いたしました。短納期で評価することができますので、宇宙環境下でのアウトガス試験のスクリーニング試験法としてご活用頂けます。

*材料、デバイスの開発時には本スクリーニング試験で問題ございませんが、実際の衛星搭載時には再凝集物質量比(CVCM)も含まれたASTM E595規格での試験結果の提出を求められる場合がございます。

簡易アウトガス試験フロー

簡易アウトガス試験フロー図

試験事例

電子デバイスのアウトガス試験事例

表1は、当センターにて実施した電子デバイスのアウトガス試験結果です。質量損失比(TML)、
再吸水量比(WVR)ともに基準値(それぞれ、1%、0.5%)を大幅に下回る結果となっており、宇宙で使用した場合であっても、アウトガス量は非常に少なく、周辺機器へ与えるダメージは少ないことが明らかになりました。また、異なる品番での僅かな差異も判断することが可能です。

表1:電子デバイスのアウトガス試験結果

プラスチック材料のアウトガス試験事例(ASTM E595 規格試験との比較結果)

表2は、社外試験機関(ASTM E595 に準拠)と当センターにおいて、同一のプラスチック材料を試験した結果です。僅かに当センターの方が多い値となっておりますが、社外試験機関とほぼ同程度の値となっていることがわかります(値の誤差については、材料の作製ロットが同じであるため、試験の実施時期による差異と推定)。今回の結果から、宇宙で使用する場合は、用途や搭載箇所について検討を要する材料であることがわかりました。

表2:プラスチック材料のアウトガス試験結果