パナソニック式 EMCデザインプロセス “SPIDER”

EMCについて、このようなお悩みをお持ちではないでしょうか?

やはり、EMCは難しい・・・「セミナーは受けたが設計に対応できていない」「個人のノウハウは共有されていない」「EMCの設計ノウハウがない」「設計ルールはあるが、うまく活用さてていない」「買入品でEMCのトラブルが発生した」

組織として、EMC設計の技術レベルを上げるためには、設計ルールのデータベース化や、シミュレーションツールの導入、そして、エンジニアの設計セミナーへの派遣など、様々なアプローチが考えられます。しかしながら、これらの断片的なアプローチでは、その効果が十分に得られないケースが多く、必ずしもベストな方法とは言えないと私たちは考えています。

パナソニックでは、約10年前から、商品開発の現場でEMC性能を確実につくり込むための最適なプロセスを検討し、多くの事業場に適用してまいりました。それが、パナソニック式 EMCデザインプロセス “SPIDER(System of Panasonic Innovation Design for EMC Requirement)” です。SPIDERの導入により、EMC設計仕様の作成と適用、そして技術者の育成までが一貫して可能となります。また、SPIDERによる商品開発の経験を通じて、実践力のあるEMC技術者が育ちます。

設計レベルの向上-量産の間近に多発していたEMC起因による設計変更がなくなった 衆知による設計-設計の初期段階から、各パートの技術者が集って、EMCを考慮するようになった ノウハウの資産化-SPIDER活動を通じて54件のEMC設計ルールを作り、イントラにて関係者への共有を図った EMC技術者の育成-EMC経験の浅い回路技術者が、全機種のEMC設計のレビューをできるようになった

パナソニック式 EMCデザインプロセス ”SPIDER” の導入による効果事例

SPIDERは幅広い製品に適用可能なEMC設計プロセスです。ここでは、SPIDERの概要についてご紹介いたします。

SPIDERのコンセプト

SPIDERは、「万能のEMC設計ルールは存在しない」という基本概念に基づいています。 EMC設計では、「前の商品では上手くいったが、今回は効果が無かった」という事例は数多くあります。また、仮に確実に効果があるという設計ルールがあったとしても、商品の基本性能への影響やコストとの兼ね合いで、適用することができないというケースもあるでしょう。

上記のようなリスクを想定すると、実際の商品開発の過程においては、当初から「商品ごとにEMC設計ルールを作る」というスタンスを取ることが最も合理的であると言えます。そして、そのためには衆知でアイデアを生み出し、検証を経て設計仕様化し、確実に商品設計に反映させてゆくことが必要となります。

技術分野を超えた周知-商品ごとの個別ルール-各フェーズでの検証

SPIDERのアプローチと、全体の流れ

SPIDERには、3つの特徴的なアプローチがあります。それが、「マエダシ検討会」、「アトオシリスト」、そして「ミニ検討会」です。
「マエダシ検討会」の目的は、衆知で多くのアイデアを出すこと、「アトオシリスト」はそれらのアイデアをストックし、検証を通じて、EMC設計仕様にまで高めること、そして「ミニ検討会」は個々のアイデアの検証の場となります。

長年の活動によ裏付けされたアプローチ ・EMCは、開発のメインフローから持出しして検討する ・回路設計者だけでなく、P板や機構の設計者などの衆知をあつめる ・商品ごとに特化したEMC設計ルールを作ってゆく ・EMC設計ルールには〇×判定をしない(考え方や結果を残す) ・解析ツールや事前評価によるプレ検証が大切 ・人材育成は、研修ではなく開発・設計を通じて行う キーとなるアプローチはこの3つ「マエダシ検討会」「アトオシリスト」「ミニ検討会」

続いて、それらのアプローチを全体の流れを通じてご説明します。
最初に、SPIDERでは、EMCの検討を商品開発のメインフローと切り離して行います。これは、各設計担当の技術者が自らの設計範囲の枠を超えて一堂に集うことで、衆知を集めやすくし、そして最も適切な設計工程で、EMC設計を実施するためです。

例えば、機構設計にてアース接続が不十分であったために、回路設計でフィルタの追加が必要となるというケースは十分に起こりうることです。また、半導体の選定を慎重に行うことで、回路設計やP板設計の難易度を下げられることもあるでしょう。
つまり、各技術の枠を超えて、EMCを検討するためのフローを設けることは、必然と言えます。

まず、設計着手に先立って、「マエダシ検討会」を開催します。「マエダシ検討会」では、各技術者がアイデアを出すことだけに注力し、アイデアの有用性の検討は行いません。そして、出されたアイデアは、「アトオシリスト」として整理され、「ミニ検討会」と商品開発フローを通じてブラッシュアップされ、設計ルールとなってゆきます。

■通常の商品開発フロー(構想設計→機構設計・回路設計→P版設計→試作→品質評価) パナソニック式EMC計フロー(アイデア)→マエダシ検討会(関係者の「衆知」)アトオシリスト(・設計アイデアの「ストック」 ・設計仕様の「エビデンス」)ミニ検討会→仕様の反映orフィードバック→設計ルール

キーとなる検討ステップについて

マエダシ検討会

「マエダシ検討会」では、各技術者がアイデアを出すことだけに集中できるよう、参加者が発言しやすい雰囲気作りと適切な誘導が重要となります。そのためにSPIDERでは、導入期に専門家(EMCファシリテーター)による運営サポートを行っています。
専門の技術を有するEMCファシリテーターによる雰囲気作りと的確な質問により、参加者の発言を促します。そして、異なる技術者同士のコミュニケーションを円滑にし、各技術者の経験&思考を最大限に引き出してゆきます。

なお、EMC設計のアイデアは実績のあるものに限らず、失敗事例や、前機種の仕様などから抽出してゆきます。そして、そのアイデアは次のステップである「アトオシリスト」へのインプットとなります。

EMCファシリテーターによる発案のShien 前機種からのアイデア抽出図 回路技術者⇔ファシリテーション⇔機構技術者⇔EMC技術者⇔相乗効果⇔P板技術者(過去のノウハウ・成功事例・過去の対策・アイデア・全機種仕様・失敗事例・他社事例) EMCダシリテーターによる発案の支援 前機種からのアイデア抽出 EMCファシリテーターによる発案のShien 前機種からのアイデア抽出図 回路技術者⇔ファシリテーション⇔機構技術者⇔EMC技術者⇔相乗効果⇔P板技術者(過去のノウハウ・成功事例・過去の対策・アイデア・全機種仕様・失敗事例・他社事例) EMCダシリテーターによる発案の支援 前機種からのアイデア抽出
アトオシリスト

「マエダシ検討会」で出されたアイデアは、「アトオシリスト」として各設計の工程ごと分類されます。この段階では、「アトオシリスト」は“玉石混淆“の状態です。そこから優れたアイデアを抽出し、設計仕様に反映させるため、「ミニ検討会」や「プレ検証」を実施します。

そして、決められた設計仕様については、各工程ごとに検証が加えられ、「アトオシリスト」にフィードバックされます。また、フィードバックの際は、結果の○×判定ではなく、どのような考えの元に仮説、検証を行ったのかの記録を残すことが重要です。各工程にて、この検証活動を繰り返すことで、最終の設計ルールが明確になってゆきます。

マエダシ検討会→アトオシリスト→技術資産の流れ アトオシリスト(INPUT:マエダシ検討会で掘り起こしたアイデア OUTPUT:各工程への設計仕様) 1.アイデアを各工程ごとに分類し、検証を実施 2.ミニ検討会&プレ検証を経て、設計仕様に反映 3.フィードバックを通じて、完成度を上げてゆく(〇×ではなく、何を考えて、どうなったか)
ミニ検討会

「ミニ検討会」は数ある設計アイデアを絞り込み、設計仕様に落とし込んでゆくことが目的です。
その際、必要に応じ、「プレ検証」として、シミュレーションや、各種評価を用いた判断を行います。この「プレ検証」における設計仕様の妥当性確認こそが、EMC性能のつくり込みに直結する重要なステップとなります。

構想設計(例:新規) 機械設計(例:端子板のビス位置を決める 半導体のEMC評価) 回路設計(例:ダイピング、終端の定数を決める 電磁界解析 SI解析) プリント基板設計(例:パシコンの位置・容量を決める PI解析) 構想設計(例:新規) 機械設計(例:端子板のビス位置を決める 半導体のEMC評価) 回路設計(例:ダイピング、終端の定数を決める 電磁界解析 SI解析) プリント基板設計(例:パシコンの位置・容量を決める PI解析)

SPIDERの5つのメリット

次に、SPIDERを適用することによる主なメリットを示します。SPIDERは自社開発の商品にEMC性能をつくり込むことを狙いとして開発されましたが、このアプローチは近年、主流となりつつあるODMにも適用が可能です。たとえODMであっても、EMC起因での商品開発の遅延や、市場での品質トラブルの発生は自社の問題となります。各工程での「押さえ所」を把握し、適切なフォローを行うことで、よりクオリティの高いODMが可能となります。

また、過去のEMC設計ルールの踏襲ではなく、新商品の開発ごとにEMC設計ルールのブラッシュアップを行うSPIDERでは、その経験を通じて、着実に技術者の実践力が養われてゆきます。

EMCスキルの高位平準化(ベテラン設計者のスキルの共有により、組織力が向上) 常に最新のEMC設計ルール(開発ごとに設計ルールを精査m常に「使えるルール」を保有) 技術のベース構築(パナソニックのアイデアをもとにノウハウ構築の下地ができる) 実践力のあるEMC技術者(実商品での経験を通じて、実践力のある人材が育つ) ODM先を指導できる技術力(EMC設計フローの実践を通じ、設計の「押さえ所」が分かる)

SPIDER導入と定着のための3つのポイント

実施経験の無いプロセスを、実商品の開発過程に取り入れることに躊躇される方もいらっしゃるかと思います。そこで、プロダクト解析センターでは、以下の3つの手法により、組織へのSPIDERの導入と定着をサポートしています。導入の初期段階では、弊社からのサポートの割合が高い状態にはなりますが、2~3年後を目処に自組織内で自走、完結できる姿を目標にしています。

1.専門家によるファシリテーション(・ベテランの経験や、知恵の掘り起こし ・設計アイデアを出しやすい雰囲気づくり) 2.シンプルで、使いやすいテンプレート(・プレマエダシリスト、マエダシリスト、アトダシリスト ・各テンプレートは相互にリンク) 3.シュミレーション・独自評価により裏付け(・SI/PI/EMCシミレーションによる最適化 ・開発上流での特性評価による定量化) 1.専門家によるファシリテーション(・ベテランの経験や、知恵の掘り起こし ・設計アイデアを出しやすい雰囲気づくり) 2.シンプルで、使いやすいテンプレート(・プレマエダシリスト、マエダシリスト、アトダシリスト ・各テンプレートは相互にリンク) 3.シュミレーション・独自評価により裏付け(・SI/PI/EMCシミレーションによる最適化 ・開発上流での特性評価による定量化)

「マエダシ検討会」の充実のために

「マエダシ検討会」をより充実したものとするために、お客様のご要望により、弊社にてお客様の商品をお預かりして、様々な視点からEMC設計のアイデア抽出を行っています。第三者の客観的な視点を加えることで、より広くより深いアイデア検討が可能となります。アイデア抽出の詳細につきましては、回路診断のページをご覧ください。

筐体(接触・勘合、放電・開口、アース接続) 電子回路(マイコン周辺、電源周辺、フィルタ設計) ハーネス(ピン配置、引き回し、種類) プリント基板(フロア設計、パタンレイアウト、パスコン配置)