建築家
アトリエ4A代表
建築家の天野彰氏にパナソニックリビングショウルーム東京をご覧いただきながら、100歳までいきいきと暮らすためのリフォームを行う場合の具体的なポイントをうかがいました。
パナソニック リビングショウルーム 東京にて
左から、
岩佐多基(パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 デザインセンター ハウジングデザイン部 市場開発課)
永田達也(パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 デザインセンター ハウジングデザイン部 市場開発)
中尾洋子(パナソニック株式会社 デザイン戦略室)
清水沙織(パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 デザイン企画・開発部 AF・UD開発課)
天野彰氏
穐原秀育(パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 デザインセンター ハウジングデザイン部 市場開発課)
子育てを終えた主婦の方にお薦めしたいのは、料理教室のようなキッチンです。ひとり孤独に台所に立つのではなく、友だちと一緒にワイワイつくって食べたり、お孫さんに料理を教えたり、もちろんご主人も一緒につくって一緒に食べ、毎日パーティーができるスペース。私はこれを「ジャンボテーブルキッチン」と名付けています。
それでしたら、この「Irori Dining(いろり ダイニング)」はいかがでしょうか。ダイニングテーブルの中央部にマルチワイドIH調理器(最大4個)を埋め込み、火力の調節をする操作パネルをキッチン側、ダイイング側につけ、対面で操作ができるようにしました。
みんなでつくりながら食べ、楽しく集うことができる「いろり」のようなダイニングキッチンをイメージしています。
IH調理器を使ってこのまま鍋もできる。まさにIHならではの現代版「いろり」ですね。。
IH調理器の上にレンジフードも付いているので、揚げものや炒めものも楽しんでいただけます。
レンジフードの音がおしゃべりの邪魔になりませんか?またそのお手入れは?
ファンを天井裏に設置しているので、運転中も静かで、テーブルでの会話を邪魔しません。また、ファンには特殊なコーティングを施しているので油がつきにくく、回転が止まると油を飛ばして下の受け皿に落とす設計になっているので、ファン自体は10年間お手入れ不要です。
手間のかかるレンジフードの掃除は年をとるとますます負担になりますから、メンテナンスフリーはありがたいですね。でも、油がたまった受け皿の掃除は必要ですよね。
受け皿ははずして食洗機で洗っていただけます。それも年に1回程度で大丈夫です。ふだんは表面だけ拭いていただくだけです。
食洗機はどこに組み込まれているのですか?
3方向から使えるラウンドアクセスシンクの近くに食洗機を設置しています。指先などが汚れていても使用できるように、2回ノックすれば扉が開くようになっています。
片付けもみんなでできますね。食洗機の扉を開けるのをWノック式にした理由は何ですか?
偶然手を触れてしまったり、脚がぶつかったりしたときなど、誤作動で扉が開かないようにするためです。
今度は、「開け!」と言えば開く食洗機をつくっていただきたいですね(笑)。
フルオートオープン機能(2回ノックすると、扉が自動オープン)
パーティーができるキッチンに欠かせないのがバックヤードです。オープンスペースによぶんなモノを持ち込まないため、ストック用の食材をわかりやすく収納するために、パントリーをつくるといいですね。根菜類など冷蔵庫に入れないほうがいい食品も、カゴなどに入れてそこに置くようにすればいいですね。
食品庫内の浮遊カビを抑制する「ナノイー」発生装置を搭載し、湿度を調整する調湿材を使った食品庫「根菜キーパー」なら、根菜類をまとめて保存できます。
あ、これはいいですね。引き出し式のワイヤーバスケットだから見やすいし、適度な湿度を保ってくれるのもいいです。。
「ナノイー」搭載食品庫「根菜キーパー」
リビングに小上がりのスペースを設けると、平坦な空間に変化がつき、目線が変わることで脳に刺激を与えます。ベンチのように腰かけてもいいし、寝転んで本を読んでもいい。内部を収納に使えば、リビングがすっきりします。
ここではワークスペースの椅子として、また、食事のときはダイニングテーブルの椅子にも使える収納「畳が丘」を提案しています。中は収納になっていて、引き出し式と、フタを跳ね上げるハッチ型の2タイプがあるので、単体としてベンチのように置く以外に、いくつかを組み合わせて和の空間づくりにもお使いいただけます。
畳収納ユニットで小上がりをつけるというアイデアはいいですね。リハビリにもなります。いくつかを組み合わせてテーブルを囲めば、掘りごたつもできますね。
座面が広いので立ち座りが楽にできます。
耐震性もリフォームの大事なポイントになります。都市直下型の阪神淡路大震災では家具の転倒や家具の上に置いた物の落下のために逃げ道を失い、亡くなられた方が多かったのです。タンスや書棚などの大きな家具は倒れたときに逃げ道をふさぐばかりか、押し潰される危険もありますから、そのような事態を防ぐためには、天井までの壁面収納がお薦めです。
当社の壁面収納ユニットは、壁面にネジで固定し、ユニット同士もネジでしっかり固定することで耐震性を高めています。揺れを感じると扉を施錠する耐震ロック付きなので、中の物が飛び出すのも防ぎます。
これならたくさんの本や趣味の道具もすっきり収められ、もしものときも安心ですね。
お風呂のリフォームはどんなところに気をつければいいのでしょうか?
腰かけて入れるお風呂が安心です。浴槽のフチが広くなっていれば、そこに腰かけて座り、手で体重を支えながら入れます。浴槽の長さも大事ですよ。浴槽の底にお尻をつけて脚を伸ばしたときに、向こう側の壁に脚が届く長さがいい。脚が届かないと、おなかが浮いてしまい、滑って溺れる危険性があります。浴槽の大きさを決めるときは、必ず奥さんの身長に合わせて選んでください。深さも浅い方が安心です。髪を濡らしたくない時もあるでしょうし、半身浴がいちばんヒートショックを起こしにくいと言われていますから。
ショールームでは、浴室や浴槽の広さなど実際に見て、触って体験いただくことができます。浴槽のサイズを変えて、自分に合った大きさが確認できるシミュレーションもできます。
リフォームを考えはじめたら、まずこのようなショールームに実際に足を運んでみて、試してみるのもよいですね。
トイレには肘掛け椅子のような感覚で使えるアームレストがオプションでつけられます。アームレストを持って身体を支えると座りやすく、立ち上がるときの負担も軽減されます。
さっそく試してみましょう。ああ、これは両手でつかめるから、いい支えになりますね。寝室の横にこういうトイレを設置すると、ベッドから伝って行くことができます。
また、この引き戸は、左右どちらからでも開閉することができる上に、一般の引戸より大きな開口幅が確保できるので、車いすでも入りやすくなっています。
これはいいですね。自宅で介護を行なうとき、一番の課題となるのは「排泄」です。高齢者がトイレへ一人で行けることは、その人の自立度を高め、プライドを守ることにつながります。また、介護をする側にとっても、排泄介助の負担が減ることが、がんばりすぎずに介護を続けていく上で、とても大切なポイントとなるのです。
例えば、寝室のすぐとなりにトイレを設けるなど、トイレを中心にリフォームを考えてみるといった、これまでの常識にとらわれない新しい視点が、人生100年時代におけるこれからのリフォームを考えていく上で、必要なのではないでしょうか。
左右どちらでも開閉できる 「3枚連動引違い」
1943年愛知県に生まれる。日本大学理工学部経営工学建築科を卒業。
大阪万博で「生活産業館」をプロデュース、建築家集団「日本住改善委員会」を組織し、生活に密着した住まいづくりやリフォームを手がける。元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。住宅や医院・高齢者施設などの設計監理を全国で精力的に行うほか、「住まいと建築の健康と安全を考える会」を発足、テレビや講演、新聞、雑誌など広く活動している。「50歳から生涯暮らすリフォーム」(KADOKAWA、2018年5月発売)を執筆。
中尾洋子 パナソニック(株) デザイン戦略室 課長 / 全社UD担当
趣味を楽しめるようにしたり、耐震性を考えたり、そして何より将来の安全性に配慮する…ショールームを見ると、色々なことを具体的に考えられるので良いですね。例えばトイレなど、必要なところに手すりがないと、不安定なものに寄りかかってしまい、思わぬけがをすることもあります。様々なシミュレーションも出来るようになっていて相談も出来るので、是非お近くのショールームをのぞいて見て下さい。
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