作業療法士/株式会社UDワーク代表
ひとりでは不安なときもあるけど、やっぱりできるだけ住み慣れた家で暮らしたいと思われる方に、何か家電ができることはないでしょうか。作業療法士としてリハビリテーションに携わりながら、介護が必要な方が自分らしい生活を送る支援を行っておられる前田亮一さんに、パナソニック(株)デザイン本部の中尾洋子がおうかがいしました。
中尾
ひとり暮らしやご夫婦だけで住んでおられるシニアの方々は、日々の暮らしの中で、どんなことに困っておられますか?
前田さん
シニアの方だけの世帯でどんなことが起こっているかというと、家の電話に知らないところからジャンジャン電話がかかってきて、コロナになってからは、それがさらに加速しています。その半分くらいはかなり怪しくて、おそらく住んでいるのが高齢者だけで、健康状態や、話のつじつまが合うかどうかなどまで把握しているのです。
「こういう電話がかかってきたんだけど、どう思う?」「それはアブナイからやめたほうがいいよ」と相談できる相手がいればいいのですが、向こうは孤立して誰にも相談できそうにない人を狙ってかけています。そういう電話に出て話すと、個人情報がどんどん知られてしまうので、「知らない相手には何も話さないでください」と言わざるを得ない状態です。
中尾
Panasonicでは電話に迷惑防止の機能をつけています。まず着信前に「この通話は録音されます」と警告を発し、着信中に「迷惑電話にご注意ください」と注意を喚起し、電話に出ると通話内容を自動で録音します。録音した通話を、ご家族など相談したい相手との電話で再生して共有できる機能もあります。
前田さん
振り込め詐欺がかかってきたときに、その場ですぐ家族に相談できるキャッチホンみたいな機能もあればいいのになぁ~。僕がこの人は絶対大丈夫だろうと思っていた人も、ある時、見事に騙されてしまいました。話を聞くと、相手の感情をゆさぶって冷静な判断ができないようにする手口がじつに見事なんです。今は詐欺が怖いから、電話に直接出ずに、留守電で相手の名前を確かめて初めて出る方が多いですよ。
中尾
認知症の方が、デイケアや薬の時間、ゴミの日を忘れてしまうのを防ぐために、専門医が開発されたアプリがあるんです。ただ、スマホを持ってなかったり、タブレットを渡しても使われなかったりして、アプリではなかなか難しいということで、「シニアの方が毎日見ているテレビでお知らせできないか」というご相談をいただきました。直ぐに商品化することは出来なかったのですが、家電がネットに繋がるようになって、テレビから洗濯が終わったことやオーブンレンジの過熱が終わったことを音声で教えてくれる「音声プッシュ通知」サービスが開発され、その中でおでかけや薬の時間、ゴミの日などの情報もお知らせできるようになりました。通知の設定はご本人でも、家族がセットしてもいいのです。この機能、前田さんはどう思われますか?
「音声プッシュ通知」サービス
テレビやロボット掃除機、LEDシーリングライト、ドアホンから、うっかり忘れがちな「ゴミの日」や「薬の時間」、お出かけ前に便利な「今日の天気」などを音声でお知らせすることで、快適なくらしをサポート。
さらに、対応のIoT家電と連携させると、家電の運転状況をお知らせ。
- 家電の動作状況を通知するには、別途、対応のIoT家電が必要です。
- サービス提供内容は改善等のため、予告なく変更、停止する場合があります。
- ご利用には、対応のIoT家電をインターネットに接続することが必要です。
- ご利用には、CLUB Panasonic IDが必要です。
- 荷物の配達状況(ヤマト運輸)の通知には、クロネコメンバーズ(外部リンク)の登録が必要です。
前田さん
それ、僕もほしいです。ゴミ出しをすぐ忘れるので(笑)。
シニアの方はやはり毎日テレビをご覧になるので、スマホやタブレットではなく、テレビがスケジュールを教えてくれるのは理想的だと思います。
ビデオ通話もテレビでできると一番いいのですが。
中尾
テレビにビデオ通話の機能はないのですが、テレビドアホンのモニター親機を使って離れて暮らすご家族とビデオ通話ができるものはあります。
前田さん
ひとりでいることに不安を感じておられる方もいらっしゃるので、こんな便利なものがあるんだよと知る機会、できれば実際に体験できる機会をつくることが必要ですね。言葉だけでは、便利さをなかなか実感していただけないと思うので。
- ビデオ通話にはモニター親機とグローバルIPアドレス[IPv4]が付与されている高速インターネット回線の 接続が必要です。無線ルーターはUPnP機能に対応した商品をご使用ください。
- 本製品を使用するそれぞれの世帯にインターネット環境が必要です。
中尾
エアコンもじつはほとんどの商品がWi-Fiにつながるようになっています。カメラはついていませんが、一部の商品ではセンサーで人の動きを検知してグラフで表示する「おへやモニター」機能があるので、それを利用すると、ひとり暮らしのシニアの方がどの時間帯に在室され、お部屋の中で活動されているかがわかるのです。また、ご家族が離れて暮らす高齢者の方のエアコンをご自身のエアコン操作アプリ(エオリア アプリ)に登録することで、お部屋の温度環境やエアコンの運転状況をリアルタイムで確認することもできます。
冷蔵庫でも扉の開け閉めがWi-Fiを通じてわかるので、「今日は冷蔵庫を一度も開けてないな」と気が付いたら連絡してみるとか、「つながる家電」でゆるやかな見守りができるかなと思うのですが、実際にどんなふうに使えばいいと思われますか?
前田さん
やはり、この先どんなふうに暮らしたいか、体調が急に悪くなった時に、誰に頼りたいか、まずご本人に選択を促すことが大事かなと思っています。
シニアの方はみなさんひとり暮らしをすることに不安を感じていて、家族には迷惑をかけたくないからと施設を探しておられる方もけっこう多いのです。でも、一方で、できるだけ住み慣れた家にいたいという思いもある。その中でどうやって安心・安全を確保するか。
近所づきあいのある方はいいのですが、それがない場合は、行政や地域の見守りに頼ることになります。でも、自分の個人情報をどこまで知らない人に伝えるかが問題になるかなと。自分の親のことを考えても、近所づきあいも地域活動もしていないようなので、プライベートな事情を民生委員さんと話すより、家族と話したほうがいいのかなと。そういうことをご本人に確認したうえで、認知症があるとか、他にも持病があるとかで、急に体調が悪くなるかもしれないというとき、「つながる家電」が離れて暮らす家族が見守るための貴重なツールになると思います。
スマートフォンにインストールすれば、エアコンの遠隔操作や運転状況の確認が可能になるアプリ
センサーが人の動きを検知して、反応数をグラフ表示。反応の有無や多さで、家族の様子がわかります。
作業療法士/株式会社UDワーク代表
作業療法士として在宅医療・介護に16年従事。法政大学地域研究センター 客員研究員。認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(DFJI)交通プロジェクト代表として、認知症になっても安全に外出ができる社会を目指して取り組むほか、高齢者や障がい者の社会参加と多世代の地域のつながりプロジェクト「UDワーク」を茨城県つくば市で実践中。コロナ禍において、外出自粛による心身の衰えを予防するため、「オンライン・リハビリ」や「高齢者支援型オンラインサロン」を運営している。2022年2月より株式会社UDワークを設立。
中尾洋子 パナソニック(株) 全社UD推進担当主幹
今はネットに繋がる家電も色々出てきていて、今まで出来なかったことも出来るようになってきています。使うご本人が便利に使える機能も、離れて暮らすご家族が、ゆるやかに見守れたり、難しい設定を遠隔で代行できる機能もありますので、家電を購入される際にご検討頂ければと思います。また、私も在宅勤務で勧誘の電話や訪問を受ける時がありますが、電話の着信読み上げ機能やインターホンのモニターで心理的負担は大分軽減されています。
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