微小異物分析

近年、電器・電子製品用部材などデバイスの小型化に伴い、異物が小さくなり、これまで有効だった顕微赤外(IR)分析でも不良部分の分析が困難になってきています。 この問題を解決する方法として、顕微レーザーラマン分析が有効です。

レーザーラマン分析の原理

物質にレーザー光を当てると、当てた光と同じ周波数の散乱光(レイリー散乱光)の他に、異なった周波数の散乱光が観測され、この光はラマン散乱光と呼ばれています。この2つの散乱光のエネルギー差はラマンシフトと呼ばれており、物質内の化学結合の振動エネルギーに対応します。

分子にはさまざまな化学結合があるため、ラマンシフトは分子構造に関する情報を与えてくれます。よって、ラマン散乱ピークをラマンシフトに対して並べたラマンスペクトルを解析することにより、物質の同定や分子構造解析が可能になります。

レーザーラマン分析図 レーザーラマン分析図

顕微レーザーラマン分析による異物分析

共焦点顕微鏡にてレーザースポットを最小1μmまで絞ることで、赤外分析では困難な微小物質も分析可能です。 また、前処理がほとんど必要無く、短時間で感度よく分析することができます。
図は直径1μmのポリスチレンビースを測定した事例です。

ポリスチレンビーズの顕微鏡観察結果と、ポリスチレンビーズの顕微鏡レーザーラマンスペクトル ポリスチレンビーズの顕微鏡観察結果と、ポリスチレンビーズの顕微鏡レーザーラマンスペクトル

顕微レーザーラマン分析によるセンサー内の異物分析

顕微レーザーラマン分析装置には、共焦点顕微鏡と分光器が組み合わされており、透明材料の内部にある異物であれば、透明材料越しに分解能2μm程度の分析が可能です。多層薄膜素子のデバイスなどの異物が内部にある場合にはサンプリングが困難な場合に有効です。

これはセンサー内の異物を分析した事例です。電極に異物が挟まっているのが顕微鏡にて確認できます。通常では破壊しない限り、 異物を分析できませんが、顕微レーザーラマン分析では、ガラス越しに異物の分析が可能ですので、非破壊にて異物の分析が可能です。ラマンスペクトルから異物は多結晶シリコンであることがわかり、これがショートする原因物質であり、センサーの不良原因が明らかになりました。

センサー内異物の顕微レーザーラマンスペクトル センサー内異物の顕微レーザーラマンスペクトル

顕微レーザーラマン分析によるセンサー内のマッピング

顕微レーザーラマン分析装置にはマッピング機能が搭載されており、最小空間分解能1μmにて指定範囲における成分と量を可視化することができます。
センサー内の棒状異物分析の事例を示します。センサー内のくし型の電極に棒状の異物が乗っていることが顕微鏡にて確認できます。異物が小さいため、破壊の際に異物を紛失してしまうこともあります。溝に沿って測定点をずらしながら連続測定を行うことにより、ラインマッピング結果を得ることができます。
測定点が棒状異物の部位に差し掛かったときにシリコンのラマンピークが観測されたことから、棒状異物の正体も結晶性シリコンであることが判明し、ショートする原因物質を特定することができました。

棒状異物の可視画像と棒状異物のラマンマッピング 棒状異物の可視画像と棒状異物のラマンマッピング