硫黄ガス分析
硫黄ガスは、電子部品などの金属部材を腐食し、外観不良や動作不良を引き起こします。また、低濃度でも強い悪臭物質(メチルメルカプタンや硫化メチルなど)による異臭の原因となる場合もあります。この硫黄ガスの発生源は、製品を使用する環境の大気や、ゴム・樹脂部品、梱包・包装資材からのアウトガスであり、これらの発生を調査することで、製品トラブルの防止や不具合対策を講じることができます。
硫黄ガス分析(GC/SCD分析法)の概要

GC/SCD分析法は、硫黄ガス成分を分離するガスクロマトグラフ部(GC)と、分離した成分を検出する化学発光硫黄検出器(SCD)で構成されています。GCでは、試料がカラムに導入され、成分によりカラム中の固定相との相互作用(吸着、分配)の強さが異なる性質を利用して分離します。SCDでは、各硫黄ガス成分をバーナーで燃焼させて一酸化硫黄(SO)とし、次にオゾン(O3)と反応させて二酸化硫黄(SO2)を生成した時の化学発光反応を利用して検出を行います。

また、硫黄(S)を有しない成分は二酸化硫黄(SO2)を生成しないため、硫黄ガス成分のみを選択的に高感度で分析することが可能です。

■GC/SCD分析法で分析できる主な硫黄ガス成分
- 硫化水素
- 硫化カルボニル
- 二酸化硫黄
- メチルメルカプタン
- エチルメルカプタン
- tert-ブチルメルカプタン
- 硫化ジメチル
- 二硫化ジメチル
- 三硫化ジメチル
- 二硫化炭素
- ジメチルスルホキシド
- テトラヒドロチオフェン
- その他硫黄化合物
■GC/SCD分析法による硫黄ガスの測定例
製品の倉庫保管・輸送の期間において電子部品の硫化腐食が発生し、硫黄ガスの発生源を特定するため、梱包部材の段ボールをGC/SCD分析法により測定した例を以下に示します。

段ボールを入れたサンプリングバックの気相より、20~150ppbの硫黄ガスが4成分(硫化水素、硫化カルボニル、メチルメルカプタン及び二硫化炭素)検出されたことから、段ボールが腐食性ガスの発生源であることが確認できました。
硫黄ガス分析の応用例

GC/SCD分析法で得られた硫黄ガスの成分や濃度情報をもとにガス腐食試験を行うことにより、トラブルの再現実験や、製品や部品への影響を調査することができます。
■分析応用事例
- 腐食原因、硫化変色原因、異臭原因の特定調査
- 脱臭、消臭性能評価
- 液体(水、有機溶媒)中の硫黄分析
- 加硫ゴム中の遊離硫黄(S8)の分析
