発生ガスやにおい成分の調査・分析サービス

商品や部材、各種材料から発生するガスは、におい、腐食、汚染などの様々な材料トラブルの原因となるだけでなく、人体に対しても悪影響を及ぼすことがあるため、発生ガス成分の種類や量を分析することは非常に重要です。
当社では、これまでの様々な商品開発の際に蓄積した分析技術やノウハウを用いて、においの原因や発生ガス成分を明らかにすることで、お客様の問題解決のお手伝いをいたします。

捕集方法(サンプリング)

試料が大きい場合、あるいは、環境の評価を行う場合は、捕集機材を用いてサンプリングを行います。特に、既設建物内の空気や動かすことのできない大きな試験体などについては現場に直接お伺いして捕集作業を行うことも可能です。

捕集方法の例

手法

テドラーバッグ(1~20L程度)

小型チャンバー(20L)

現場での空気捕集

適用例

車載部材、基板など

建材、小型製品など

環境評価など

発生ガス分析手法

通常、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)にて、各成分を分離して分析します。分析試料の大きさや形態(固体・液体・気体)によって装置への様々な導入方法があります。お客様の分析目的に対して、最適な分析方法をご提案いたします。

GC/MS分析における加熱方法の例

手法

捕集-加熱脱着法

加熱脱着法

ヘッドスペース法

熱分解法

試料形態

固体・液体・気体

固体・液体

固体・液体

固体・液体

加熱温度

~290℃

~290℃

~190℃

~900℃

適用例

製品や各種部材、
環境評価など

原材料、成型品など

原材料、成型品、
水系試料など

樹脂材料など

上記の種々の方法で捕集した発生ガス成分をガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)計に導入します。GC/MS分析計は、ガスクロマトグラフ(GC)部と質量分析計(MS)部から構成されます。GC部では、ガス試料中の多くの成分を、カラム内の充填剤との相互作用の強さの違いにより分離します。そして、分離されたガス成分は、MS部でイオン化され、質量数(m/z)に応じて検出されます。クロマトグラムやマススペクトルから、有機成分の同定および定量分析が可能です。

GC/MSの装置構成と原理

発生ガス分析事例

発生ガス分析の一例をご紹介します。クリーンルーム内の雰囲気空気を捕集し、加熱脱着-ガスクロマトグラフ質量分析法にて測定します。汚染のないクリーンルームからは有機成分は検出されないのに対し、汚染のあるクリーンルームからは、低分子環状シロキサン類を検出しています。このように、一定空間内の空気の汚染度をppbレベルで評価することが可能です。

クリーンルーム雰囲気のGC/MSチャート

クリーンルーム雰囲気のGC/MSチャート図

N量体

汚染あり

汚染なし

D4

0.1

<0.1

D5

0.8

<0.1

D6

1.2

<0.1

におい成分分析手法(におい嗅ぎGC/MS)

においは複数の化学物質が混ざり合った複合臭(混合臭)になっていることが多く、濃度や構成比率が変化するとにおいの感じ方(臭気)が変わることがあります。また、非常に低濃度(微量)でも強いにおいを発する(=嗅覚閾値の低い)化学物質もあることから、におい成分の調査では、においを構成する成分とその濃度を分析するだけでなく、においの種類や強さも含めて評価する必要があります。
以下に、香りや異臭(悪臭)の原因になっているにおい成分の定性・定量分析と、臭気を同時に測定できるにおい嗅ぎガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS-O)法(以下、におい嗅ぎGC/MSと表記)による調査・分析サービスについて紹介いたします。

におい嗅ぎGC/MSは、におい成分を分離するガスクロマトグラフ(GC)部と、分離した成分を検出する質量分析計(MS)部、それに検出成分のにおいを嗅ぐことができるにおい嗅ぎ部で構成されています。 GCでは、試料がカラムに導入され、成分によりカラム中の固定相との相互作用(吸着、分配)の強さが​異なる性質を利用して分離し、におい嗅ぎ部と質量分析計(MS)部に分岐します。におい嗅ぎ部では、分析者の嗅覚によりにおいの種類や強さを感知します。質量分析計(MS)部では、成分がイオン化され、電場内で質量ごとに分離されて検出器に到達します。これにより得られたMSスペクトルによりにおい成分の定性を行います。

におい嗅ぎGC/MSの装置構成と原理

におい嗅ぎGC/MSによる測定例

柑橘系の香気を有する香料をにおい嗅ぎGC/MSで分析した例を以下に示します。

におい嗅ぎGC/MS分析結果

GC/MS分析チャートでは大小含め多くの化合物のピークが検出されていますが、におい嗅ぎシグナルで検出されたのは11成分になります。これらに該当する化合物のピークを定性分析することで、においの主成分はにおい嗅ぎシグナルが強く検出されたオクタナール[6]、ノナナール[7]、および、リナロール[11]の3種類であることが判明し、においを可視化することができました。

上記の分析結果のように、におい成分は必ずしもGC/MS分析チャートのピークが大きい化合物とは限らないため、“GC/MS分析”と“におい嗅ぎ”を併用することにより、GC/MS分析チャートの小さなピークでも臭気物質と特定することができ、試料のにおい成分を正確に評価することが可能です。

■分析応用事例

  • 異臭原因の調査
  • 脱臭、消臭性能評価
  • 製品や部材の臭気比較調査
  • 臭気物質の調査