高分子材料の平均分子量・分子量分布測定(GPC)

高分子材料の物性を大きく左右する平均分子量や分子量分布を把握する手段として有効なGPC(Gel Permeation Chromatography:ゲル浸透クロマトグラフィー)測定サービスについてご紹介いたします。

GPC分析の概要

GPCは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の一種であり、溶媒に溶かした試料を多孔質充填剤を詰めたカラムに通し、分子の大きさ(体積)によりカラムを通過する速度(溶出速度)が異なる原理を利用した分析方法です。分子量既知の標準高分子試料(標準ポリスチレン等)を用いて、分子量と溶出時間から較正曲線(検量線)を作成し、この較正曲線を用いて、測定試料の溶出時間から分子量を算出します。SEC法(Size Exclusion Chromatography;サイズ排除クロマトグラフィー)と呼ばれることもあります。

GPCの装置構成と原理

一般的に高分子材料はその平均分子量、分子量分布によって物性(引張強度、 衝撃強度、溶融時の流動性(MFR、MVR)、溶液粘度等)が大きく変化します。そのため、高分子材料の特性把握には、分子構造情報だけではなく、平均分子量 や分子量分布を把握することが重要になります。

GPCは一度の測定で、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、多分散度(Mw/Mn)などを求めることができ、分布状態を試料間で比較することも可能です。
Mn、Mw、Mzは試料の分子量Miとその分子数Ni、ピーク高さHiから以下のように算出されます。

Mn=・・・低分子量成分の影響を受けやすい Mw =・・・・・・高分子量成分の影響を受けやすい Mz =・・・Mwよりもさらに高分子量成分の影響を受けやすい

多分散度は、大きいほど分子量分布が広く、1(すなわちMn=Mwの時)に近い値であるほど分子量分布が狭い試料であるといえます。

GPC測定例

実際にアクリル樹脂を測定した例を以下に示します。
左の図がGPCクロマトグラムで、右の図が微分分子量分布と積分分子量分布の重ね描き図です。

溶出時間
分子量(微分分子量分布と積分分子量分布)

GPC測定結果のイメージ

標準高分子試料を用いて作成した較正曲線とクロマトグラムとの対応から、平均分子量や分子量分布が算出されます。測定結果から、Mn= 2.4×104、Mw = 8.8×104、Mw/Mn= 3.7 のアクリル樹脂であることがわかりました。

■分析応用事例

  • 材料特性評価(物性との相関把握)
  • 品質管理(ロット間や異なる試料間の差異の確認)
  • 劣化分析 等

GPC測定可能な条件、高分子の例

下記の条件以外にも様々な条件の対応が可能です。詳細はお問合せください。

<測定可能な条件の例>

溶離液

クロロホルム、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N –メチル-2-ピロリドン(NMP)、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)等

必要試料量

10mg~ (溶剤可溶物量として)

分子量範囲

約500~5,000,000 (標準高分子試料による)

標準高分子試料

ポリスチレン(PSt)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド(PEG/PEO)等

<測定可能な高分子の例>

高分子

溶離液

  • ポリスチレン(PS)
  • アクリル樹脂(PMMA等)
  • ポリカーボネート(PC)
  • ポリフェニレンエーテル(PPE、PPO)
  • エポキシ樹脂 <未硬化物>

テトラヒドロフラン(THF)or クロロホルム

  • ポリ塩化ビニル(PVC)

テトラヒドロフラン(THF)

  • アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂 <可溶分>
  • ポリ乳酸(PLA)

クロロホルム

  • ポリアクリロニトリル(PAN)
  • 熱可塑性ポリウレタン

N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)

  • ポリエステル(PET、PBT等)
  • ポリアミド(ナイロン等)
  • ポリアセタール(POM)

ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)