非接触ひずみ計測 ~デジタル画像相関(DIC)法~

デジタル画像相関(DIC)法とは、非接触・非破壊でひずみを計測する手法です。計測範囲全体のひずみ分布やその方向を測定することができます。

お困りごとがある様子 (新材料を使うけど、 物性値は どのくらいだろう? CAEで 応力解析したけど、 妥当な 結果なのかな?)

非接触にひずみを計測することで、そのお悩みを解決させていただきます。

デジタル画像相関(Digital Image Correlation(DIC))

  • 非接触かつ非破壊で測定対象の変位・ひずみが測定可能。
  • 解析領域内でのひずみの分布が測定可能。
  • 2台のカメラを用いて撮像し、画像処理を行うことで、3次元解析が可能。
  • ひずみゲージを貼り付けるのが困難なソフトマテリアル(樹脂、ゴム、フィルム、人工皮膚、etc.) での測定が可能。
撮影に用いるカメラ

【取得可能な物理量】

  • 変位
  • 速度
  • 加速度
  • 形状変化
  • ひずみ
  • 座標変換による
    特定方向のひずみ
  • 線膨張係数
  • ポアソン比
  • 弾性率
  • 応力 – ひずみ曲線

(※)別途試験が必要です。

測定・解析の流れ

①スペックルパターンの形成 ②パターンを追跡しての変形を測定 ③解析により、ひずみ分布を出力 ひずみのコンター図(初期状態:画像をサブセットと呼ばれる微小領域に分割し、 各サブセットごとにパターンを追跡し変形(ひずみ)を測定。→変形後1→変形後2)

測定範囲

撮影可能範囲:
最大:約240 mm × 200 mm 最小:約11 mm × 9 mm
※測定条件により、範囲が変わることがあります。

面内分解能:画像サイズに対して1/200,000
面外分解能:画像サイズに対して1/100,000
ひずみ計測レンジ:0.005% (50με) ~ 2,000%(※測定条件によります。)

この他に、広角レンズやハイスピードカメラを用いて測定することも可能です。

計測事例

  • 樹脂ダンベル片引張時の物性値(弾性率、ポアソン比)
  • 接着剤・両面テープの物性値を接合状態で測定
  • 成型品の線膨張係数測定
  • 金属加工製品の線膨張係数(加工後の線膨張係数)
  • 落下衝撃試験時に生じるひずみ分布
  • フレキシブル基板に負荷を与えた際に生じるひずみ分布
  • 熱サイクル試験における電気製品の端子部の変位量
  • はんだ接合部の熱応力解析結果の妥当性検証

引張試験の様子

き裂進展の様子

計測事例 ~線膨張係数~

デジタル画像相関(DIC)法を用いることで、成型品の線膨張係数を計測することができます。

ここでは、樹脂の成型品の線膨張係数を計測した事例を紹介します。線膨張係数の評価としてはTMA(Thermomechanical analyzer)と呼ばれる熱機械分析装置を用いて行うのが一般的です。しかし、TMAにセットできるサンプルサイズは数mm程度なので、成形品そのものの線膨張係数を測定するのは難しく、サンプルを切り出す必要があります。そこで今回はデジタル画像相関(DIC)法と呼ばれる画像解析を用いて、成型品の線膨張係数の計測を行いました。

◆ 解析原理

物体は温度変化によって膨張・収縮するため、その変化をカメラでとらえることで線膨張係数を計測します。

(低温→拡張→高温 拡張→収縮→収縮)解析に用いる直線 温度変化による、ある直線の 長さの変化を解析することで 線膨張係数を計算します。

◆ 測定方法

今回は2種類の樹脂の成型品の線膨張係数を計測しました。1つ目は、ポリカーボネート(PC)の成型品です。2つ目は、ポリプロピレン(PP)の成型品です。どちらも様々な製品で使用されている汎用樹脂です。どちらも恒温槽内にサンプルを設置し、恒温槽の外から窓ガラス越しにカメラで撮影する方法で測定しました。

測定① ~PC成型品の線膨張係数~(・槽内の温度: 25℃、55℃、80℃、105℃ ※製品に熱電対を貼付し、別途温度を測定  ・写真撮影: 目標温度到達後、カメラで撮影) 測定② ~PP成型品の線膨張係数~(・槽内の温度:-40℃~120℃まで連続昇温 ※製品に熱電対を貼付し、別途温度を測定  ・写真撮影:一定時間毎に、カメラで撮影)

◆ 測定結果① ~PC成型品の線膨張係数~

以下に示すのが、 PC成型品の線膨張係数の測定結果です。温度が上昇すると膨張することが分かりました。また、温度に対して膨張率が線形に増加しているので、今回の測定温度である25℃~105℃の範囲内ではガラス転移点が存在しないことが分かりました。PCのガラス転移点は約145℃なので、今回の結果と一致します。グラフの傾きから、 PC成型品の線膨張係数は7.0 × 10-5 [1/℃]であることが分かりました。

PC成型品の線膨張係数 図

◆ 測定結果② ~PP成型品の線膨張係数~

以下に示すのが、 PP成型品の線膨張係数の測定結果です。温度が上昇すると膨張することが分かりました。また、温度と膨張率の関係に変曲点が存在するため、ガラス転移点が存在し、その温度は26.0℃であることが分かりました。PPのガラス転移点は0℃なので熱的挙動に差異が確認できました。この差異の原因として、成型による影響が考えられます。グラフの傾きから、 PP成型品の線膨張係数は低温時に5.3 × 10-5 [1/℃]、高温時に15.6 × 10-5 [1/℃]であることが分かりました。

39.0℃(左)と119℃(右)の 時のY軸方向変位 (変位の基準は25℃)

解析原理

① サブセットとステップを設定し、解析点を決定する

初期(参照画像)→変形後 中心点(解析点)を追跡する様子

② それぞれの解析点で変位を算出し、3点で構成される三角形を構成する。

中心点(解析点)を追跡する様子

③ 面素から変位をひずみに変換する。

変位からひずみの計算 
・x方向ひずみ ・y方向ひずみ ・せん断ひずみ

よくある質問

Q1

z軸方向ひずみ(面外方向のひずみ)は測定できますか?

A1

測定できません。DICで測定できるのはxy軸方向(面内方向)のひずみになります。z軸方向の変位をとらえることは可能です。

Q2

DICの測定装置の販売は行っていますか?

A2

販売は行っていません。サンプルの測定を通して、お困りごとへのソリューションを提供します。

Q3

スペックルパターン形成に使う塗料は特殊なものですか?

A3

市販のスプレーを使用しています。塗料が塗布しにくいサンプルに対しては、サンプルに表面処理を行った後塗布しています。

Q4

撮影可能範囲よりも小さなサンプルのひずみを測定することはできますか?

A4

適切なセットアップを組めば測定可能です。まずは一度ご相談ください。

Q5

特殊な形状のサンプルですが、測定できますか?

A5

測定に合わせた治具を作製すれば測定できることがあります。まずは一度ご相談ください。

Q6

凹凸が大きなサンプルですが、測定できますか?

A6

カメラのピントが合えば測定・解析が可能です。

Q7

温度サイクルをかけながらひずみを測定することはできますか?

A7

可能です。ほかの試験を行いながらひずみを測定することが可能です。弊部では恒温槽や疲労試験機も保有しているので、それらを組み合わせた試験が可能です。

プロダクト解析センターでは非接触3次元ひずみ計測の受託試験を承っています。
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