光学物性の評価(紫外・可視・近赤外分光分析、UV-Vis-NIR分析)

材料の光学物性(透過率・反射率)を測定する紫外・可視・近赤外分光分析サービスについてご紹介します。

紫外・可視・近赤外分光分析の概要

試料に光を当てた際の光の透過率・反射率を分光光度計で測定することができます。

分光光度計で測定できる光

分光光度計で測定できる光学物性値、その算出方法と適した試料を下の表に示します。

分光光度計で得られる光学物性値の算出方法と適した試料状態

光学物性値(測定値)

測定値の算出方法

試料状態の適用例

備考

透過率

正透過率

正透過光 ÷ 入射光

溶液など

吸光度の算出も可能

拡散透過率

(全透過光-正透過光)÷ 入射光

フィルムなどの固体

ヘーズ(曇り度)の評価に有効

全透過率

全透過光 ÷ 入射光

上記の全試料

反射率

正反射率

正反射光 ÷ 入射光

金属光沢のある試料

鏡面反射

拡散反射率

(全反射光-正反射光)÷ 入射光

金属光沢のない試料
(固体・粉末など)

見た目の色を管理する場合に有効

全反射率

全反射光 ÷ 入射光

上記の全試料

材料本来の色を管理する場合に有効

測定装置に試料をセットする様子を下の図に示します。試料が液体の場合には、石英のセルに試料を入れ、装置にセットします。試料が固体の場合には、透過率、反射率ともに装置内に固定する必要があるため、試料の大きさの制限があります(25~50 mm角、厚み:15 mm以下)。

液体の測定(透過率)
固体の測定(透過率) 積分球(※)を使用
固体の測定(反射率) 積分球(※)を使用

※積分球・・・入射した光を均一化するために中で何度も反射させて集める球体の入れ物で、内側には白色標準の硫酸バリウム粉末を固めた反射材が入っています。

各波長における測定値を示したグラフはスペクトルと呼ばれます。スペクトルからは、試料の化学的もしくは物理的特性に関する知見を得ることができます。一般的に、ピーク強度からは試料の濃度 (定量) を、スペクトル形状からは試料がどのような物質なのか (定性) と試料の電子状態および立体構造を解析することができます。

レーザー用色素(ローダミン6G)の吸収スペクトル

用途

  • 光学材料の光学物性(透過率・吸光度・反射率)測定
  • 溶液濃度測定(成分が既知である場合)

特徴

  • 物質がどの波長の光を透過・吸収・反射するかがわかる
  • 液体および固体の測定が可能
  • 有機物における特定の吸収帯を持つ官能基の有無がわかる(ベンゼン環の有無など)

測定可能形態

液体、固体

測定範囲

195~3100 nm(積分球使用の場合:195~2600 nm)

試料サイズ

  • 液体の場合・・・0.5 mL以上
  • 固体の場合・・・25~50 mm角、厚み:15 mm以下

紫外・可視・近赤外分光分析法の測定例

■紫外線吸収剤の有無による樹脂の耐光性比較

樹脂(紫外線吸収剤なし)にキセノンランプを1000時間照射すると黄色に変色しました。その際の吸収スペクトル変化(初期: 青、1000時間照射後: 赤)を下図に示します。青色(>400nm)を吸収して黄変していることが判明しました。

紫外線吸収剤なし
吸収スペクトル

■その他適用例

  • 光学フィルムの光学物性評価
  • 水中のホルムアルデヒド濃度測定
  • 水中の塩素系ガスおよびオゾンガス濃度の測定

紫外・可視・近赤外分光分析法の原理

白色光を波長ごと分けた光を試料に照射した際に得られる透過率を、各波長に対してプロットしたものは透過スペクトルと呼ばれます。透過スペクトルを計測し、どの波長(光エネルギーと反比例)の光を透過(または吸収)するかを調べることによって、物質の分子構造の中に特定の官能基が含まれているかがわかります。

紫外・可視・近赤外分光分析法の図 (白色光→プリズムを通して分光された光→試料→検出器(透過スペクトル)) 紫外・可視・近赤外分光分析法の図 (白色光→プリズムを通して分光された光→試料→検出器(透過スペクトル))