XPS分析による電極表面分析

各種デバイスの電極にはめっき膜やスパッタ膜などの様々な材料が使われていますが、その表面状態の変化がトラブル原因となって電極特性が低下してしまう場合があります。そのトラブル原因解明の手段の1つとして、XPS分析があります。ワイヤボンディング不良、はんだ濡れ性不良、電気特性不良に対するXPS分析の受託分析サービスを行っておりますので、事例をご紹介いたします。

XPS(ESCA)分析の原理

X線光電子分光分析(XPS;X-rays Photoelectron Spectroscopy)は、各種材料のごく表面(数nm(ナノメートル)の厚み)の元素分析を行う表面分析手法です。超高真空中で固体試料へX線を照射すると、光電効果によって光電子が放出されますが、この光電子が分光器を通って得られるエネルギースペクトルを解析することによって、試料表面の構成元素(水素とヘリウムを除く)を調べることができます。
XPSは、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも呼ばれており、化学結合状態(酸化、硫化、窒化など)を調べることもできます。
また、イオンビームを照射してエッチングを行えば、表面から試料内部への深さ方向の元素分布情報を得ることもできます。

XPSの原理と測定スペクトルの例

ワイヤボンディング不良原因の解明

半導体パッケージなどでのワイヤ不着や剥離のトラブル原因としては、電極(めっき膜、スパッタ膜)の表面汚染や表面凹凸がありますが、膜厚が薄くなるにつれて下地成分の表面拡散が原因となる場合が増えてきました。金めっき膜の場合、下地のニッケルめっき膜からニッケルが表面拡散してニッケル酸化物(NiO)が形成されると、電極表面の硬い酸化物が金ワイヤとの接合を阻害します。
XPS分析による電極表面分析を行うと、ワイヤボンディング不良原因を解明できるとともに、不純物元素の表面拡散量の定量化によって、最適な成膜条件の導出に役立ちます。例えば、めっき液の選定時に、めっき膜の表面分析を行って下地成分の表面拡散量を比較することによって、表面拡散を抑えるめっき液の選定ができます。

金めっき膜表面のXPS分析スペクトル

はんだ濡れ性不良原因の解明

はんだ実装を行う電極表面で有機物汚染や表面酸化が多いと、はんだ濡れ性が低下します。
イオンビームを照射してXPSで深さ方向分析を行うと酸化厚みを調べることができますが、はんだ濡れ性が悪いスズ電極表面を分析したところ、酸化厚みが厚いことがわかりました。酸化膜が存在すると電極成分とはんだ成分の馴染みを阻害するため、はんだが濡れにくくなります。

デバイスを大気中で長期間保管すると電極表面が酸化してしまい、はんだ濡れ性が低下するため、
酸化防止対策や保管期間短縮などを検討する必要があります。そのような対策のために酸化度合を定量化する際にも、XPS分析が役立ちます。

スズ電極のXPS深さ方向プロファイル
スズ電極のXPS分析スペクトル

導通不良原因の解明

スイッチやリレーの接点材料には銀が使用されることが多いですが、使用環境によっては接点表面で硫化や塩化が発生して、導通不良を起こしてしまう場合があります。
XPS分析で銀接点の表面分析を行ったところ、数%の硫黄が検出され、一部の銀が硫化していることが確認できました。少量の硫化であっても導通不良を起こす原因となることがXPS分析でわかりました。

また、銀は可視光線の反射率が高いため、光反射機能が必要な電極には銀めっき膜や銀スパッタ膜が使用されることが多いです。このような銀電極も硫化しやすく、硫化すると反射率が低下してしまいます。このような場合には、XPS分析による深さ方向分析で硫化厚みを調べることが有効です。

銀接点表面のXPS分析スペクトル